▽映画

▽アクトレス

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ジュリエット・ビノシュが好きだから、忙しさの間を縫うようにして、珍しくひとりではなくお友達と観に行ったヒューマントラストシネマ有楽町。

なんか、久しぶりに、「感動しなくっちゃ」という強迫観念なしに楽しめて、それで、ほんとうに心動かされた。
「美しく生きること」。
内面はもちろん外面もしっかりと、「美しく生きること」をテーマにせざるを得ない女優という職業のヒロインが抱える加齢という問題。
これが、やはり40代の最後を生きる私としてはとても近い問題だから、ヒロインのひとつひとつの言動が身にちくちくしみる。
よいセリフがたくさんあって、それでパンフレットを買ったのだけど、やはりシナリオ収録ナシ。
これが残念。
女優たちのプロフィールなんてネットでいくらでもわかるのだから、シナリオが欲しい。
DVDで借りてしっかりとメモしたい。
私のあたまのなかに残ったセリフがふたつ。
もちろん正確ではない、だいたいの意味なんだけど、こんなかんじ。
「若さに執着しない人は年齢そのものから自由でいられる」
「どんな低級な作品(娯楽作品)のなかにだって真実はあるし、そういう作品で真実を表現することはできる。かしこまった作品がかならずしも真実を表現するわけではない」
ああ。かなり自分的な意味で書いてしまっています。
けれど、すごく共鳴した部分。
それで。
この映画、原題は「シリス・マリア」っていう。
これは、スイスの南東部、高級山岳リゾート地で知られるサン・モリッツ(シャネルもここにいたことがある)からバスで20分くらいの小さな集落の名前。
ここが重要な舞台になってる。
それでそれで。
この近くには独特の気象現象があって、それが「マローヤのヘビ」って呼ばれている。
初秋の早朝に、運が良ければこの現象を見ることができる。
山の合間を雲、というかすごく濃い霧が這うようにうねうねと流れる、ものすごい壮観な光景。
マローヤ峠を這うヘビ……のような雲、濃い霧。
私は「マローヤのヘビ」を、この目で見てみたい、と切に願った。
気象現象をこんなに強く見たい、と思うのはあまりないことだ。
もしかしたら軽井沢の霧を深く愛しすぎていて、その流れかもしれないな。
それでそれでそれで。
映画のラストのほうでこの「マローヤのヘビ」が見られるのだけど、そのときに流れる音楽が「パッヘルベルのカノン」。
この組み合わせ以外あり得ない、というほどにみごとで、私は身体の真ん中で落涙した。
感動的なシーンだった。
映画館で観てほんとうによかった。
パッヘルベルのカノンをそれから毎日聴いている。
かなしい気持ちを、すこし晴れやかにしてくれるときもあるし、慰めてくれるときもある。
だから熊本に行く飛行機で、音楽のチャンネルをクラシックに合わせたら、うそみたいにパッヘルベルのカノンが流れてきて、ほんとうに驚いた。
来年の初秋に私はスイス、シリス・マリアに行って「マローヤのヘビ」を見たい。
*ユーチューブへのリンクがうまくできないので、それぞれのカノンをお聴きください。
私はベルリン・フィルハーモニーのが好き。

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