◎愛についてのキンゼイ・レポート◎
2016/10/20
性なんかぜんぜんいらない。興味も欲望もない。
というシーズンはあるだろうし、その分野に向けられるベクトルは、それこそ人それぞれなのだろうが、この映画を見ると、人の「生」のなかに占める「性」の大きさを痛感せずにはいられない。
今では当たり前になっていることがちょっと前……70年くらい前までは、ぜんぜん当たり前ではなくて、「自分は正常なのか、異常なのか」で痛いほどに、みんな、悩んでいる。
性の実態調査に人生をかけた男と、彼ととてもよく似ている(基本的なものの考え方が)妻の物語。
人がしていないことを始めようとするときに必要な情熱、勇気、そしてもれなくついてくる偏見、そんなのがびっちりと詰まっているような映画だった。
キンゼイ博士は、もともとはタマバチの研究をしていて、そこで何を発見したか。
映画の冒頭でそれが出てくるのだけど、これが映画のテーマなのだ、と私は感じた。
「相違こそが生命の基本原理である」
正常も異常もない。ただ、違うのだ、それだけだ。
目新しいことではないけれど、あらためて目の前に提示されて、胸の奥にじんとしみた。