▽追憶(「映画音楽と物語」より)
2017/02/20
「住む世界」が違う二人、そして、なにより「生き方」が異なる二人が惹かれあって、結婚をし、どこまで寄り添うことができるのかという、それが一つのテーマの、1973年のアメリカ映画。主演バーブラ・ストライザンドとロバート・レッドフォード。
バーブラ演じるケイティとレッドフォード演じるハベル。この二人の出会いとなった学生時代、十年後の第二次大戦中の偶然の出会いから結婚(出産)と別れ、そしてまた、十年後の再会。
ケイティは、貧しい家の出でユダヤ人で共産主義者であり、政治活動に熱心で、自分の信念に忠実に生きようという女性。そして美人とはいえない容姿の女性です。ハベルは裕福な家庭に育ち、容姿端麗でスポーツ万能、器用に世の中を渡っていけるタイプの男性。
ハベルはケイティに対して、どこかほおっておけない想いを抱き、愛し、そして彼女の信念を尊敬していますが、しばしば、ケイティが頑なに信念を曲げないことで二人は諍いを起こします。
けれど別れ話を前にケイティはハベルへの愛を優先させることを誓って二人は結婚。ハリウッドに渡って脚本家として再出発するハベルをケイティがサポートする生活が始まります。
しかし、ハリウッドは赤狩りの恐怖に侵されつつあり、持ち前の正義感、政治思想がもはや抑えきれなくなったケイティが政治活動を開始することで、二人に別れが訪れます。
ケイティは妊娠中ですが、お互いに、これはもうどうにもならない、生き方が違いすぎると悟って、二人は別れを決意。ケイティはハベルに最後のお願いをします。出産の日まではそばにいてほしいと。
ケイティのセリフがせつないです。
「私はただ、ずっと愛し合いたかった、それだけなのに」
十年後、ニューヨークで偶然に再会する二人。二人とも別の相手と再婚をしていて、もう二度とその人生が交わることがないのに、それでも二人の瞳には、忘れえぬ思いが溢れて、胸がしめつけられます。
どんなに愛し合っていても、ともに人生を歩めない。そういうことがありうるということ。どんなに愛し合っていても、ともに人生を歩めない。ひしひしと胸に染みます。
ラスト、二人の再会のシーンに流れるのが、バーブラ・ストライサンドが歌うThe Way We Were。(私たちがかつていた道)です。
水彩画のようなあの日の記憶、戻りたいようにも思うけれど。
思い出の日々に対するせつなさが胸にせまる、そんな歌です。
♪作曲 マーヴィン・ハムリッシュ 作詞 バーグマン夫妻 「追憶」お聴きください。
「追憶」訳詞:山口路子
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メモリー 心をともす 水彩画のような あの記憶
散らばった 写真のなかで 微笑みあうふたり 過ぎし日よ
あの頃に戻れたら 同じようにほほえみ
やりなおせるかしら 無邪気に ふたり
メモリー 懐かしさより せつなさがつのり
忘れたくなる だから笑顔だけ残すの
水彩画のメモリー 美しき 過ぎし日よ
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追憶★2016年12月21日「語りと歌のコンサート~映画音楽と物語」台本より。