◎おとなのけんか◎
2016/06/11
平日のちょっと空いた時間に映画を観ようだなんて、心身の調子がいい証拠だ。
そんな気分になるときというのが、あまりないのがなさけないが。
「おとなのけんか」、ジュディ・フォスター、ケイト・ウィンスレットという大物女優が出ているからではなく、監督がロマン・ポランスキーだから出かけた。
ロマン・ポランスキーといえば、たいてい「ゴーストライター」とか「戦場のピアニスト」の監督!って紹介されるけれど、私にしてみれば、「赤い航路」「死と処女」の監督。
私と好みが似ているかも、と思える方はぜひ一度ご覧ください。そうとう、面白い。赤い航路がとくに、好き。テーマは、たぶん「死に至る愛憎」。
さて。おとなのけんか。面白かった。
出演はふた組の夫婦、4人だけ。子供の喧嘩に親が出て、最初は理性的に話し合ったりしているのだけど、だんだん本性が出て、原題の「CARNAGE」(修羅場)に。
平日昼間なのに劇場はほぼ満員で、皮肉、ユーモアが細かく刻んでちりばめられた会話劇に、なんども笑いがおこっていた。
たぶん、英語が理解できたら、もっともっと面白に違いない。
80分という時間、マンションの一室、ほとんど会話だけなのに、飽きさせないで、いっきにみせる。
映画館を出て、私はこの映画から何を得たのかなー、と考えた。
そうしたら「明るめカタルシス」という言葉が浮かんだ。
カタルシス、精神の浄化作用。
おとなな4人は、時間が経つにつれ、本性むき出しになり、最後は体裁もなにもなく、やりたいこと言いたいことを、青筋立てて怒鳴り合う。
なんだかそれが爽快だった。
私の仕事は、ほとんど一人で行うものだし、子供を介した親同士の付き合いというのも皆無だし、まあ、「それ」を避けて生活しているからなんだけど、人との摩擦による苛々が、たぶん、他の人たちよりも少ない。
それに、くだらないなあ、と思う人を相手に、むきになるのは、自分が同レベルであることのように思えて、プライドだけで生きている私のような人種には、たえがたい。ゆえに、さらりと流そうと努力することになる。
ああ、おもいきり、怒鳴ってみたい。
言いたいことやりたいことを、体裁気にせずやってみたい、とどこかで思っているから、この映画が爽快だったに違いない。
あともう一つ。
おとな4人が本性をあらわしはじめるのは、「アルコール」がきっかけ。スコッチだったかな。
やはりアルコールは危険です。最近は飲んでいないのは、身体のこともあるけれど、やっぱりなんだかこわいから。臆病なのだ。
だからアルコールでうっぷんをはらそうとか、自分をときはなちたいとか、そう思えるひとは勇気あるひとなのかもしれない、なんてそんなことを考える、汚れた雨の朝。