◎「愛のあしあと」◎
2016/06/09
『愛のあしあと』、DVDで観賞。
びっくりした。ものすごい名作!……だと思うのに、それほど話題にならなかったような気がする。
公式サイトを見ると、2013年6月の終わりに2週間の限定公開だったって。
私にとってはどうでもいいような映画がお金かけて宣伝されている一方で、この映画がそんな扱いをされているなんて、あまりにも悲しすぎる。
この映画、女優3人の存在が、とにかくすばらしい。
カトリーヌ・ドヌーヴとキアラ・マストロヤンニ、実の母娘の共演。
キアラのお父さんはあのマルチェロ・マストロヤンニだから、もう、血がすごいんだけど、でも、どんなに優秀な両親のもとに生まれても両親の存在につぶされる子もいるから、そんななかにあって、キアラは強い、強烈。
そしてその母娘におしつぶされることなく輝いているのがリュディヴィーヌ・サニエ。
映画は、一応のストーリーはあるけれども、とにかく混沌としている。
キリスト教モラルとか、なんとなくの世間一般的なモラルとか、そういうのが機能しているようで機能していない。
ようするに愛に敏感な種類の人間というものの姿を美化することなく描いている、そんなかんじ。でも奇妙なことに、みんなが美しい。
愛がなくては生きられない。
というテーマがひとつあるけれども、その生き方をした結果が、やるせない。
愚かで自己愛に満ちて、そんななかでがらにもなく家族や友を想いやったりして。死があって。
けっして明るい物語ではないのに、全体的に陽気な空気が満ちていて、見終わったあと、しみじみと生きるということへのエナジーみたいのがわきあがってくる。
こういうのを優しい映画と言うの。