ゆかいな仲間たち よいこの映画時間

◎10本目 「ホワイト・オランダ―」

2017/05/10



み:隠れた名作じゃない? 久しぶりにご覧になってどう?

り:昔はもっと気軽な感じで観ていたような気がする。でも、改めて観てみると全然気軽な感じではない。

み:全然気軽じゃないよー。イングリッド役のミシェル・ファイファーの演じるママ凄いよね。

り:洗脳をするタイプですよね。

み:でも私、ああいう風になるのが怖くて、注意深くそうならないように自分の子どもに接してきたような気がする。

り:誰でも起こりうる事ですか?

み:なりそう。なりそうだけど、なりたくてもなれない人っているでしょう? やっぱりある程度、母親側に影響力が必要。特にこのお母さんはアーティストで、あれだけ綺麗だから条件は備えているけど。まあ、あそこまで強いものは無いにしても、全てに共感できる。片鱗があるというか、何かしらの要素を持っているし、娘は自分が作り出したものだから、芸術作品と一緒で美しいものでなければならないの。ヴィジュアルの事では無く、良いものであるという事。だからそういうものに対しての思い入れと、自分の気に入るように育みたいという想い、そして永遠の子どもじゃないとダメなアーティストとして生きていくと決めていた人が、子どもを持っちゃった時の葛藤。

イングリッドが娘を置き去りにして1年くらい家を出る時の気持ち。全然休みを与えてくれなくて、「ママ、ママ、ママ、ママ」ってクモみたいに纏わりついてくるから壁に投げつけたくなるって言ってるけど、あれはアーティストではなくても、全母親共通の想いだと思う。

り:路子さんも言ってた通り、イングリッドが表現するものってどの母親にもあるんですよね。うちの母親に近いなって所もあったし。自分の思う様にしたいって思っている所も、映画ではより強く極端に出ているだけであって、本当に誰にでもある話。

み:そう。だからあんなに特異なストーリーなのに、割とヒットしたって事があるとしたら、普遍的なものがあるからなのよね。それが極端な形で出ているだけ。でもやっぱり血は争えない。娘のアストリッドの強さの方が怖いよね。

り:次第に母親に近づいている部分と、母親とは違う、自分が歩んできたからこそ見つけてきた部分が上手く混ざってる。

み:そうね。やっぱりアメリカ映画的なハッピーエンドな終わり方よね。結局イングリッドも娘への愛を選んだ訳でしょう? 多分、娘役の女優のアリソン・ローマンが凄いのかな。魅せるよね。しかも可愛いけど、メイクだけでは無い。

り:口調も。

み:声も違ってた。最初、ママを待ってるわって言っていた時と、最後の大きくなって彼とニューヨークで暮らしてる時の声が一緒よね。

り:戻った感じですよね。荒れてしまった状態を身をもって止めて欲しいってアストリッドがイングリッドに言ってましたけど、だからこそ最終的にイングリッドは自分を犠牲にするかわりに、娘に証人として裁判に立たせなかった。アストリッドもそういった経緯でからなのか、荒れた状態から抜け出していましたね。

み:という事は、母親から愛されているって思える事はどれだけ大切かって事かな?

り:愛されてるっていっても、表現に対してどれだけ自分が受け入れられるかっていうのもあると思います。タイミングとか、投げかけられ方とか。

み:そうか。イングリッドは母親の立場からすると、ずっと娘のアストリッドを愛してる。だけど、彼女の希望を聞いてあげるという形での愛し方はずっとしてこなかった。アストリッドも終盤で初めて自分からはっきり希望を言う。証言をさせないで、そういう愛し方をして欲しいって。その時イングリッドは1回躊躇するのよね。でも結局の所、その希望を受け入れる。だからその時、娘の希望を聞いてあげるという愛し方を初めてしたのよね。そして、それがアストリッドはとても嬉しかった。
やっぱりこの映画はストーリーも良いけど、女優が凄かった気がする。

り:良いですよね。

み:ミシェル・ファイファーのあの目線。アーティスト狂ってますみたいな、いっちゃってる目。

り:狂気の目。

み:うん。光が分散する様なコンタクトを入れてるんじゃないかと思うくらい。

り:私、このレネー・ゼルウィガーも凄く良いと思う。

み:ねっ。これ凄いよね。

り:レネー・ゼルウィガーっていうと、「ブリジット・ジョーンズの日記」や「シカゴ」のイメージがあるけれど、この消え入りそうな感じ。

み:この人も危うくて、クレイジー。種類は違うけれど、狂的な感じ。

り:どの女性も男に人生を狂わされてますよね。

み:そうですね。

り:最後の里親だけが違う。この人が1番好きで、人間味あふれるているというか。

み:あのゴミを漁らせる里親?

り:そうそう。見た目も好きなんだと思うんですけど。

み:綺麗だよね。彼女だけが男とか云々言ってなくて、お金が大事みたいに言ってるね。

り:イングリッドも男を受け入れないようにとか何とか言っているのに、男で人生が狂う。最初に行った里親のお母さんだって、自分の彼氏がアストリッドに取られるんじゃないかってまた狂う。レネー・ゼルウィガー演じる里親だって、旦那が出て行ってしまうっていうのも重なって自殺してしまうし。そういう女の姿をアストリッドは見ているから、彼女自身も男性への態度にためらいや嫌悪感を感じる節があるような気がする。

み:それはすんなり恋愛は出来ないわよね。でもあんな強要もせず、ソフトに見守ってくれる都合の良い男はいるか!って感じ。

り:(笑)

み:だって全然彼女のペースを乱さないじゃない? 例えば、アストリッドが他の人を好きになってどっかに行ってしまえば、ずっと会えなかった訳でしょう?

り:うん。

み:受け身の人。しかし悲惨な境遇ね。

り:原作があるみたいですね。

み:ベストセラーみたいね。全米で150万部以上の売り上げを記録し、世界25か国で出版された大ベストセラー小説。愛と生と孤独をテーマに人生を繊細に描くってDVDのパッケージには書いてある。

り:ジャネット・フィッチの「扉」。

み:「ホワイトオランダ―」ってどういう意味なんだろう。

り:それが映画に出てきた毒の花ってやつですかね? 桃源郷じゃなくて・・・。

み:そうそう。日本語に訳されてたよね。

り:夾竹桃!

み:そうそう。それがホワイトオランダ―なのね。それなら字幕はホワイトオランダ―にして欲しいね。

り:タイトル「白い夾竹桃」って事ですもんね。人物が毒を持っているみたいな事を言いたかったの?

み:ちなみにホワイトオランダ―は日本語で白い夾竹桃。強く美しく生きる為に毒を放つ花だそう。花言葉は危険とか恵まれた人。正にイングリッドの生き方ですね。

り:イングリッドに寄り添ったタイトルですよね。あっ、アストリッドもそれに近づくみたいな意味合いもあるのかな。

み:あの中で、母親1人選べるとしたら誰を選ぶ?

り:適度に突き放す関係なのは、最後の里親ですよね。

み:商売やらせる人ね。

り:レネー・ゼルウィガーの里親に関しては、イングリッドが劇中に言っていた通りだと思う。彼女の自殺を止めさせる為の役割としてアストリッドをそばに置いたっていうのは。

み:気晴らし兼監督者みたいね。

り:誰が良いですか?

み:一番嫌なのは、最初に引き取った里親。極端な形で描かれているとしても、失われていく若さというものに恐怖を持ち、キリスト教に適当に興味と救いを求め、知性も無い。あの人が一番嫌。

り:キリスト教の話をしていても、深みが無いんですよね。説得力が無い。

み:よくいるよね。結局、自分自身に向かっていかないで、相手に向かうっていう所も嫌い。そう考えると、誰がお母さんというのは別として(笑) 共感出来るのは、レネー・ゼルウィガーの自殺する里親と、イングリッド。2人を合わせ持ったら私が出来上がるかもしれないって思うけど、やっぱり嫌。私もりきちゃんと一緒の人。そういうシーンは描かれていなかったけど、典型的に描くとすれば、ああ見えても割と情があるみたいに描かれる人よね。

り:割とああいうタイプの人に呼ばれたら、娼婦として働かされるイメージがあるけれど、それがちょっと違う。

み:そうそう。フリマで服を売るのよね。

り:ゴミから売り物の服を見つけてるにせよ、あれ?普通の事やってるって思った。盗むとかじゃないんだって。

み:フリーマーケットだもん。意外に良いよ(笑)

り:ある程度の縛りは必要だし、でも自由過ぎるのもダメだしっていうのを考えました。ある程度の制約があるからこそ、自由が保たれるというか。

み:りきちゃんの場合は、完全に子どもの立場でしか観ないでしょう?

り:うん。

み:だからママと自分の関係っていう風に観てると思うけれど、そういう風に重ねて観るの? ああいう所あるなとか、思い通りに従う所があって、それに対して自分はこういう風に思ったなーとか。

り:アストリッドを見ていると、イングリッドに言われるとそれに従うだとか、引き取ってもらった人の好みだとかで服装や習慣も従ったりしますけど、そういう所は似ているのかなって。良い子でいなきゃって程では無いんですけど。

み:でもそれは生存本能よね。

り:従っていなきゃだとか、相手に言えない所は似てる。だからこそ、最後の最後に母親に対して言った事と、今回私自身が家を出るって自分の母親に話したのが。

み:重なった?

り:そうそう。映画程強くは言って無いですけど、そういうのは重なったかな。解放というか。

み:りきちゃんのお母さんって、お姉さんよりも、りきちゃんの方が自分と似てると思ってる?

り:だと思う。

み:そうよね。私もそれを感じる。趣味とかもね。だから、愛するのとは別として、自分と似ているものを持ってるものとしての何かを感じるんだと思う。だからこその重圧はあるかもしれない。

り:なおさら、里親を渡り歩いてる中で、落ち着きたいという気持ちが絶対あると思うんです。

み:あるある。

り:だからこそ相手に言えないし、重圧を受け入れて従って生きるしかないっていうのを観てると感じる。

み:里親の所に行く度に、そのカラーに染まるでしょう? それで母親に会いに行くと、それを見抜くし、否定するのよね。「荷物まとめて出ろ」だとか。それに対してアストリッドはその通りにする。彼氏に対する評価も、アーティストじゃなくて漫画家でしょ?みたいに言われると、最初はん?って思っていても、自分の場所に戻るとイングリッドの意見を受け入れてる。あれは実母であるイングリッドの意見を聞いて、ああやっぱりそうだなって思ってそうしてるのかな? それとも、ずっと支配されていたり、洗脳されているっていう習慣で言う事を聞いちゃうのかな? 両方もあるんだろうけれど。

り:そうやってずっと生きていたのだとしたら、習慣に近い感じはするんですよね。

み:今迄、自分の意志では動いてきて無いものね。

み:男達が魅力的じゃなかったね。

り:最初の里親の彼氏役は見た目好きですけどね(笑)

み:細くて良い身体してたね。私ダメなのよね、線が細くて(笑) レネーが演じる2番目の里親の旦那さんはどうだった?

り:見た目ですか? 中身?

み:好みかどうか。

り:私やっぱり、最初の方が良い。

み:でも2人とも線細目でりきちゃんの好みじゃない?

り:うーん。もうちょっと顔がかわいい方がいいなって(笑) 2番目の旦那さんは、顔だけで判断するとちょっと面倒くさそうな気がする。

り:最近やたらとこのDVDパッケージ(私物)に目がいっていたんです。

み:このパッケージ本当に美しいし、「ホワイト・オランダ―」って良いね。ホワイトオランダ―を牛乳に入れて飾るシーンがあったけど、この花はそうするものなの?

り:あれはアーテイスト的な発想なんじゃないですかね。

み:白い色で合わせて? 凄く綺麗よね。だからこのDVDのカバーとても気に入ったの。

り:牛乳のネットでも気になってる人が居たみたいです。花を牛乳にいけるのは、毒を抽出する為だったのかなと考えたって。

み:植物全ての部分と、周辺の土壌にまで毒があります。口から摂取する事でこれまでも人や家畜の死亡例がありました。原作にはこうあるですって。「バリー(イングリッドの彼)の家に押し入り、関節炎薬DMSOとオランダーの樹液の混合物を、バリーの家中の表面に塗り、その結果、バリーは死亡。というのも、DMSOはオランダーの毒を皮膚に吸収させる働きがあるため。」

り:結構手の込んだ殺し方ですよね。

み:だって家中のものに塗るって、非現実的よね。

り:彼の家に行った時は、まだ生きてましたよね? そんなに毒性が強いなら、自分は大丈夫なんですかね。まあ映画だから(笑) 彼の家から戻ってきた時、血にまみれたりはしていなかったから、そういう殺し方では無いっていうのは何となく思いましたけど。

み:アストリッドがイングリッドに殺した事を聞いている時、殺されそうになったから殺したって言ってたね。それってとっさの出来事な感じがするけど、とっさの行動でいろんな所に毒を塗るって事はしないよね?

り:イングリッドがそう言っているのは嘘かもしれないけど、正当防衛では塗らないですよね。きゃーって言いながら塗って。

み:殺される―って言いながら、その辺を触るのをジワジワ待ってるって事でしょ? それ変よ。やっぱり、ホワイトオランダ―を牛乳にいけるシーンが本当に印象的。私も今度花をいけるとき、やってみようかな。

り:この映画、白っていう色を凄く大事にしてますよね。イングリッドも囚人服でずっと青い服を着てるのに、法廷のシーンは真っ白の衣装で。だから、彼女の強さが際立ってた。


み:イングリッドは魅力的ね。その法廷から去っていく最後が一番綺麗だった。

り:頬がこけたりはしてますけど、何年経っても自分の強さがあるからなのか、全然変わらないですよね。寧ろ強くなっていく。

み:本当に強いというか、強烈。

り:追い込まれれば追い込まれる程、強くなるタイプですよね。監獄の中でもアーティスト活動をして個展を開くぐらいだし。

み:シャネルはああいうタイプかもしれない。良い映画だったね。凄い面白かった。これ名作だと思うな。


~今回の映画~
「ホワイト・オランダ―」 2002年 アメリカ
監督:ピーター・コズミンスキー
出演:アリソン・ローマン/レネー・ゼルウィガー/ロビン・ライト・ペン

-ゆかいな仲間たち, よいこの映画時間