ゆかいな仲間たち よいこの映画時間

◎11本目 「メットガラ ドレスをまとった美術館」


り:ファッションに興味が無い私がファッション映画を語ります。

み:珍しく観に行きたいって言ってたでしょう? どうして?

り:フランス映画が好きになった頃、雑誌で情報を集めていたのですが、「エル・ジャポン」や「フィガロ・ジャポン」も買っていたんです。

み:結構映画の情報載ってるもんね。

り:そうそう。その2つはファッション雑誌なので、デザイナーのファッション写真とか、パリコレの写真が載ってますよね。どれを見ても、えっ? これ誰が着るの? 凄く奇抜!っていうのが多いじゃないですか?

み:実際に街では着られない。

り:そう。そういうデザインのものに実は興味があって、奇抜なものであればある程、食い付いていたし、切り抜きを集めていたり、それでコラージュを作ったりしていたんです。全然ファッションには詳しくないし、興味は無いけれど…。

み:興味はあるのよ、きっと。

り:そうか、興味あるんですね。その世界に入り込む事もしないと思うけど。

み:興味はあるけど、勉強してないから詳しくないってだけよ。

り:映画の最後でも言っていましたけど、あれはメットガラの映画では無くて裏方側の映画。逆にそこがとても良かった。私自身、学芸員の資格を持っているので、そういう目線でも観る事が出来たし、あれがずっとファッション映画として進んでいって、アナ・ウィンターの話ばかりだったら、そこまで興味を持たなかったかもしれない。

み:メットガラって美術館でやるからね。上の立場の人との交渉とかね。

り:アレキサンダー・マックイーンの展覧会を昔開催した事で、美術館が服飾に興味を持ち始めたって映画では言ってましたけど、あれは服飾に興味を持ち始めたというよりは、動員数も多かったみたいだし、金銭的な動きに興味があったんじゃないかなって感じました。服って自身が着るものだし、見た目でわかりやすいというのもあるから、興味も持ちやすいし、人を集められるっていうのはあると思う。マックイーンの服も今回作品中に出てきた中国をイメージした服も、地味ではなく割と派手なものが多かったから、目に入りやすい。だから人からの注目も多いと思うし、その分お金を得られる。それは美術館としても大きな収入。だから美術館としては、アートとして服飾を観る面以外でも興味を持ったって言えるのかもしれませんね。

み:美味しい展覧会。でも、服飾はアートかどうかという議論は、永遠に続くと思う。ナンセンスといえばナンセンス。ウォン・カーウァイが出てきていたけど、ウォン・カーウァイの映画って観てる?

り:そんなに観てないと思う。

み:結構好きだと思うよ。「ブエノスアイレス」とかもそうよね?

り:「ブエノスアイレス」は観ました。

み:トニー・レオンを起用する事が多いんだけど、彼の映画が好きだし、美しいのよ。映画の中ではチャイナドレスの「花様年華」が出てきてたけど、これは凄く綺麗。ウォン・カーウァイの才能を信頼しているから、彼がメットガラで扱っていた展覧会の芸術監督をやってるっていうのを知って、今回観たいと思ったの。そういえば、学芸員のアンドリュー好きでしょう? 私、りきちゃん好きだと思った。ギャスパー・ウリエルのイヴ・サンローランに似てたよね。

り:たしかにちょっと似てたかも。

み:多分ゲイでしょう?

り:彼のパートナーって意味深に出てきたし。

み:あとで2時にねとか言ってた相手とか。

り:愛してるって言ってた人かな。

み:多分そうよね。線が細いし好みだろうなって。私は要するに好みでは無いのだけれど。
アンドリューとウォン・カーウァイの根本的な違いが浮き出てた。アーティストとそうじゃない人。どっちが上下じゃなく、人間の種類が違うって事。やっぱりキュレーターはキュレータ。私はウォン・カーウァイのアーティスト的感覚が好き。
北京の車の中で、毛沢東時代の制服と歴史的衣装を一緒に飾りたいっていうのを話してた時にウォン・カーウァイが反対していたでしょう? 私も悪趣味だなって思いながら聞いてたけど、その時に「多くを見せすぎるのはよくない。何も見せないのと同じだ。」って割と静かに言いつつ、言い切っていて、かっこいいなって思った。

り:あの展覧会の詰め込み具合は凄かったですよね。一番典型的な学芸員そうって思ったのは、中国側の担当者。お堅さというか、安全な所を選んでいる。

み:批判が怖いって言ってたおじさんでしょう?

り:でも最近の美術館って、社会に対して問題提起を投げ掛けるのが重要視されている傾向だと思うので、そういう意味ではアンドリューの意見には賛成かな。

み:いくらくらいかかってるんだろうね。バラの花も25万本使ったって言っていたし。

り:日本とはやる事なす事、規模が全然違いますよね。


り:アナ・ウィンターがスタッフ達と展示の内容を話している場面ありましたよね? あそこでアナが凄いと思った所は、無駄なものを省くっていう事。神殿の展示について話している時も、余計な飾りを外させていましたけど、それって神殿自体に展示物としての力があるからなんですよね。彼女はズバッと言いますけど、とても適格。自分も聞いている立場だったら、言い方!って思うかもしれないけれど。

み:一生懸命考えた企画を3秒ではねつけるとかね。これも良いけど…っていう言い方ではないのよね。

り:そういう言い方自体が無駄って思っているのかもしれませんね。

み:多分そうね。

り:会議はしーんとしてギスギスしていたけれど、彼女の職場は思ったよりもアットホームというか、アナも気さくでしたね。

み:うんうん、そうかもしれない。アナ・ウィンターの「ファッションが教えてくれること」っていう映画観た事ある? もし観てないのなら、これをきっかけに観てみると良いかも。

り:それは観てみたいかも。私、ドキュメンタリーってそんなに観ないですけど、今回は大分楽しめた。

み:りきちゃんが凄い楽しんでる!

り:どうでしたか?

み:私も勿論楽しかったけど、わあー感動したっていう映画では無いかな。

り:感動とは別ですよね。

み:ふむふむ、なるほどって感じよね。でも、ああいうアートとかは必要だと思うけど、どれだけお金がかかってるんだろうって思った。貧しい人々の事を考えてしまいました。それだけのお金が集まるから出来る訳で、本当に上の方ではお金ってグルグル回ってるのね。

み:アナ・ウィンターって、結婚して、離婚して、娘が1人いる。ドキュメンタリーの「ファッションが教えてくれること」の時は娘がまだ若かったの。その時のインタビューでは、ママの仕事とは違う道を行きたいって話しているんだけど、それを聞いたアナがショック…みたいな顔をしているシーンがあるの。今日も娘が出てたけど、娘に対しては他とは違う対応をしていて、娘には弱いんだなって分かって面白かった。娘は当時、法律の方へ進むわって言っていたのに、最近チェックしたら元伊版『VOGUE』編集長の息子と婚約発表して、最近は母と一緒にファッションショーのフロントに座ってるって書いてあった。だから同じ感じに。今日の作品にもメットガラに参加する時のドレス合わせしたりしてたから、同じ道を行くんだなって思って。
冒頭でマックイーンが出てたけど、死んだ背景とか、また調べたくなっちゃった。

り:こういう始まり方だとは思わなかったですよね。

み:私もマックイーンのドレスとワンピース持ってるよ。

り:まさに私の好きな感じの。

み:クレイジーな感じのね。もうあそこまでいくと服じゃないわよね。

り:ビョークって、元々奇抜な衣装を着てライブをする事が多いんですけど、最近ウニみたいなヘッドピースをかぶっているんです。ちょっと近い世界があるかも。

み:りきちゃんは好みだったから良かったと思うけど、アンドリューが出過ぎ!

り:今日のお客さんも意識高い系の人が多かったような気がしますけど、絶対思っていたのと違う映画だって思ったんじゃないかな。アナ・ウィンターとかメットガラをバッと出した映画を期待していたと思う。

み:裏方は裏方で良いんだけど、もっと衣装を提供するデザイナーとか、そっち側の情報も欲しかったな。ゴルチエとカール・ラガーフェルドとジョン・ガリアーノぐらいだもんね。ガリアーノって分かる?

り:全然思い出せない。

み:何回か出てた。

り:唇が!

み:そうそうそう! あの人どう? 好き?

り:全然好きじゃない。

み:ガリアーノってこんな人だったっけ?って。

り:元々コンセプトがファッションでは無かったのかもしれないですね。

み:まあ、メットガラに沢山の入場者がいるんだから、映画も売れるだろうっていう所で始まったんだろうね。だから製作者側が割と頑張ったんだと思う。スポンサーからは、もっと派手にしろとか、アンドリュー出過ぎとか、私みたいに言った人がいたはずよ。

り:エンドロールでスタッフがやりとりをしているシーン…。

み:いらなかった?

り:内容的には良いのだけれど、折角メットガラの雰囲気で終わったのに、ちょっとあれ?って。

み:男の子が、俺アナと似てるっていうのを言ってるのが残っちゃうね。あれで裏方っぽくしたかったのかな? まさに裏方の翌日っていう生の声を出したかったんだろうけど、それにしてもね。

り:「VOGUE」の次号の中身を話してるシーンなんですよね?

み:映画自体は思ったよりも面白かったんでしょ?

り:うん。思ったより面白かった。逆ですか?

み:もっと見せて欲しい所はあったけど、中国とのやり取りとか色々と限界なんだろうな。

り:映画でも言ってましたけど、政治的に。

み:うん。全部政治的に解釈されるってね。

り:その部分で分かり合える事は中々無いでしょうね。

み:無理でしょうね。でも結局、中国部門の人が心配していたように、誰も中国の美術作品を観ない展覧会になったと思わない?

り:衣装と一緒にちりばめられてはいたんですよね?

み:多分背景になっちゃってる。

り:たしかに。

み:まあ、それで儲かったんだから良いだろ?って。

り:トントンみたいな感じですかね。竹の展示はやり過ぎでしたよね。中の展示が何も見えないですよね。


み:竹もやり過ぎだし、花の陶器みたいなのも。あれ生花でしょう? 長持ちするのかって余計な心配をしてしまう。

り:誰かファッションデザイナーも言ってましたけど、実際の中国というよりは、今迄こういうイメージだろうって作られた中国。

み:ゴルチエが言ってたね。

り:それぞれの部屋のコンセプトが、微妙に日本ぽくないか?っていうのが混ざっていたり。だから中国というよりは、アジアという大きな一括りなんですよね。

み:そうそう。でも服飾の展示をやるとしても、皆そのイメージで来てるから、そうするしかないのよね。

り:日本人が、アメリカ人はこういう風だって思っているのと同じですよね。

み:そうそう。

り:しょうがないのかな。忠実に再現した所で、イメージと違うって言われそうだし。

み:中国の人との話の中で、どうして過去の物ばかりで今現在のものは無いんだってメットガラの幹部か何かの中国の人が言っていたけど、そこにもウォン・カーウァイが的確なフォローをしてた。結局…。

り:現在が無いからって言ってましたよね。

み:そうそう。それを言うにもアナ・ウィンターみたいにではなく、過去を研究する事によってその先があるからという言い方をしている所で、この人はバランス感覚もあるんだなって思った。

り:幹部のおじさんも、発展途中だからあははみたいな感じでしたもんね。

み:あそこは妙に皆で納得していたね。やっぱり「花様年華」を観なおそうと思った。そうだ、あんなに美しい映画だったんだなって。


み:カール・ラガーフェルドが「デザイナーが自分をアーティストと言うのは最悪だ。アーティストならランウェイでなくギャラリーへ行くがいい。」って言っている時に、シャネルもランバンもドレスメーカーだって言ってたね。シャネル自身も自分は職人だって言ってる。さっきも服飾はアートか否かという話をしたけど、アートは発する側の意識の問題なのか、受け取る側の意識の問題なのかというテーマにいくわね。

り:それも言ってましたね。

み:うん。作る時にこれがアートだと思って作ってるかどうかっていう問題があるってね。誰が言ってたかな…。あと、多分美術館の人だったと思うけど、眼鏡かけてる日本人っぽい人が言ってる事とか雰囲気は好きだったな。あまり引っかかることは無かった。一方、アナ・ウィンター側の若い男の人のコメントは嘘くさい。凄く嫌だった。

り:あのでっかいおじさんは?

み:あのおじさんは、「ファッションが教えてくれること」にも出てきていて、ヴォーグの特別的な地位にある編集者みたいな感じで、アナを補佐していたんだけど、嫌な感じだった。インパクトだけで攻めてる感じ。

り:適当な感じでしたよね。アナの娘のドレスを見ている時も。

み:上っ面だけで言ってる感じよね。ボキャブラリーも無いし。今で言えば、ヤバイヤバイって言ってるのと同じ。

り:(パンフレットのアナ・ウィンターの言葉を見ながら唱える)

「私は物事を迅速に進めるのが好きです。威圧的と思われるのは残念ですね。」
「ファンタジーがなければファッションは永遠に変化できません。」

み:映画とかで観ている中国のイメージなんだから、別に実際に行かなくても良いんだよってゴルチエが言っていたけど、あの辺にかっこよければ良いみたいな安易さがあったね。そう考えると、生み出す側の真剣さが無いような気がして。姿勢がもう違う。苦労すれば良いのかって言われれば、そうとも言えないけど。サン・ローランも中国にインスパイアされて作ってるけど、それもイメージのインスパイアだもんね。じゃあどうすればいいのかって言われると、ちゃんと研究すれば良いのだけれど。例えば、この模様はどういう背景の下で生み出されて、それをここで使うのは、こういう意図があるんだとかね。

り:そこまでやってる人はどれだけいるんですかね?

み:いないんじゃない? だからそこは「ファッション」だからってなっちゃう。

り:「ファンタジー」っていうので話がまとめられるのは、そういう部分もあるからなんでしょうね。そしてファンタジーがなければ…。

み:ファッションは永遠に変化できない。アートって、割と普遍的というか、美術館に遺っていくものっていう意識がある。それこそシャネルが、ファッションは死ななければならない。しかもできるだけ早く。そうじゃないと次のものが生み出せないからって。ファッションというのは、移り変わっていくものだから、商業ベースで永遠であっては成り立たないという事を言ってる。だからそこでも服飾はアートなのかな?ってなる所ではある。でも、ああいう風に衣装がアーカイブとして遺されているって事は、それは一つの芸術作品という事なのかな。

り:日本でも昔の衣装を展示する展覧会とかやってますけど、以前やっていた「山口小夜子 未来を着る人」という展覧会は、今回紹介されていた展覧会に似た部分があるんじゃないかなって思いました。山口小夜子の展覧会は人物にスポットライトを当てていましたけど、衣装を並べて、インスタレーションを合わせて展示するって中々日本では無いし。衣装と一緒に言葉や映像を流していました。まあ、衣装というよりも、彼女の美意識をテーマにした展覧会でした。でもやっぱり、いわゆるお堅い展示物を観たり、奇抜な現代アートを観ていくというのとは別で、良かった。見た目が好きっていうのもあるけれど。


(パンフレットの秦早穂子さんの寄稿文を見ながら…)

み:秦早穂子さんがパンフレットの中で、パリに行った時の事を書いてる。1950年末、当時のフランスは映画やデザイナーの仕事が水商売みたいに扱われていて、パリでは階級社会があって、日本にも同じようにあったみたい。けど、ニューヨークにはこういう仕事に対する差別意識が少ない。何故ニューヨークのメットガラは可能なのかっていうのに繋がるわね。しかもメトロポリタン美術館は私立で、収益を上げられる企画は必要なんですって。

り:だからなんだ。納得。お金を手に入れないと、運営自体が出来なくなりますもんね。

み:ウォン・カーウァイとのやり合いの事は、秦さんも言ってる! そうそう、やんわり断固反対なのよね。

り:むしろ、その組み合わせをよくぞ思いついたなって感じですよね。入口の龍の置物といい。

み:たしかに。やっぱり秦さんの文章は凄い!!

り:何でパンフレットの外側を綺麗な赤で作ったのに、中をそんなにポップに作っちゃったんだろう。

み:りきちゃんはパンフレットにうるさいですよー。 広告入っているだけで怒りますから。これは入ってませんね(笑) たしかに表紙に合わせて中も作って欲しかったね。
あのパーティーの出席者の中でも、やってられない、早く帰りたいって思ってる人何人くらいいるのかなって。

り:いると思いますよ。しかもハブられてる人もいるし。

み:(笑)あたし一人なのって言ってる子?

り:そう。クロエ・セヴィニー。

み:嫌だなって思ってる人いるんだろうね。

り:でもそれに出る事が一つのステータス。

み:私達が1年間に観る映画の中で、この作品は異色だと思う。

り:違いますよね。路子さんがこれを選ぶのは、何となく分かる。

み:りきちゃんが行きたいって言ったからびっくりした。これは行かないだろうなって思っていたから。

り:予告観るまでは興味が無かった。

み:「ターシャ・テューダー 静かな水の物語」は蹴られたけど(笑)

り:私、多分昔からだと思うんですけど、庭とかに興味が無い。動物園とか。

み:私だって興味無い(笑)

り:小さい頃、生きもの地球紀行とか観なさいって言われてたけど全然興味無かった。でも、ターシャは彼女の生きる術みたいなものがありますもんね。

み:私はそれを観に行きたい。身の回りのものだけで暮らしていく、そういう生き方を私は学ばなければいけないのではないかと思って。


~今回の映画~
「メットガラ ドレスをまとった美術館」 2016年 アメリカ
監督:アンドリュー・ロッシ
出演:アナ・ウィンター/アンドリュー・ボルトン/ウォン・カーウァイ/ジャン=ポール・ゴルチエ/カール・ラガーフェルド/ジョン・ガリアーノ

-ゆかいな仲間たち, よいこの映画時間