☆36本目『インドシナ』
2020/02/06
【あらすじ】
1930年代、フランスの植民地であったインドシナ。
エリアーヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、ゴム農園を取り仕切るフランス人女性の役。事故で亡くなった王族の友人夫妻の子どもカミーユ(リン・ダン・ファン)を引き取り、可愛がっています。
ある時、若い海軍士官の青年ジャン=バティスト(ヴァンサン・ペレーズ)と出会ったことで、人生が大きく動きはじめ…。壮大な歴史大作!
路子
この作品はドヌーヴの代表作ね。
色々なドヌーヴ映画を観ましたが、男に言い寄られ続けることなく、一番シュッとしていますね。自分の信念をしっかりと持った女性。今までのドヌーヴとは違う。
衣装も目立ちましたね。あの世界観の中で、周りとは違う目立ち方をしてる。
衣装も目立ちましたね。あの世界観の中で、周りとは違う目立ち方をしてる。
りきマルソー
路子
農園で支配する側の人間だし、フランス人の支配階級も影響していると思う。
路子
この作品は賞を取っているのよね?
アカデミー外国語映画賞、ゴールデングローブ賞外国語映画賞を取ってますね。ドヌーヴもセザール賞で主演女優賞を獲得しています。
りきマルソー
路子
エリアーヌは、ドヌーヴを想定して作られた登場人物なのよね。
何人かの脚本家が、彼女を想像して書いたらしいですね。
りきマルソー
路子
そうそう。この映画で描かれているのは「カトリーヌ・ドヌーヴ」なのよね。映画の登場人物と実生活は切り分けて考えて欲しい、とドヌーヴはいつも言っているけれど、この作品に関しての立ち振る舞いや、言葉、人生の選択の仕方は、きっとドヌーヴそのものなのよね。
この映画でのドヌーヴの見どころは、綺麗なところ、と言っているひとが多いわね。
この映画でのドヌーヴの見どころは、綺麗なところ、と言っているひとが多いわね。
綺麗といっても、女をムンムン出している綺麗さではないんですよね。綺麗だけでは終わらない存在。激しい言い争いもするぐらいの人物。
ドヌーヴは実生活で氷の女みたいに言われることもあるみたいですけど、映画の中でも熊男みたいな警察長官のギイに対してはそんな感じでしたよね。
一緒に働いていたフランス人夫婦を辞めさせるシーンは一見冷たく見えますけど、それに関しては、危険な目にあわせないための優しさ。
ドヌーヴは実生活で氷の女みたいに言われることもあるみたいですけど、映画の中でも熊男みたいな警察長官のギイに対してはそんな感じでしたよね。
一緒に働いていたフランス人夫婦を辞めさせるシーンは一見冷たく見えますけど、それに関しては、危険な目にあわせないための優しさ。
りきマルソー
前半はドヌーヴ演じるエリアーヌの話を中心としていて、後半はジャン=バティストと娘のカミーユの話がメイン。南北ふたつのベトナムが誕生するというタイミングで、エリアーヌが今までのことについて、ジャン=バティストとカミーユの息子、つまり孫に話しているという設定なんですよね。
りきマルソー
路子
そうそう。
しかもちょうど独立戦争終結を決めるジュネーブ会談に、本当の母親(カミーユ)が来るけれど、どうしたい?という話なんですよね。
りきマルソー
路子
うん。結局会わないのよね。
話を聞いたものの、育ててくれたエリアーヌ以外に母親がいるとは、想像出来なかったのかもしれませんね。育ててくれた人への恩義もあるし、そもそもインドシナを離れてフランスで生活をしていたので、世界の違う話にしか思えなかったのかも。
りきマルソー
路子
育ててくれた人への気持ちがあるにしても、エリアーヌにとっては娘だし、息子にとっても本当の母親だから、会ったとしても裏切られた気持ちはしないし、本当にどっちを選んでもいいのよ、という感じだっだのに、結局会わなかった。長い間フランスで生活をしていたから、息子はフランス的な考えを持ったのかしら。
突然そんな話をされて、じゃあ本当のお母さんに会う?って言われても。
りきマルソー
路子
きっと、いいや…ってなるわね。
ちょっとためらいますよね。
りきマルソー
路子
ジャン=バティストの人生は本当に激動だったわ。最初は規律を守る海軍士官なのに。
父親に「心の声に従って生きろ」と言われていたけれど、その結果、父親は情熱と狂気の末に失踪した。だからそんな風にはなりたくないから、冷徹に生きたい、と言っていたのに、結局同じ人生を歩んでる。
りきマルソー
路子
血は争えないってことね。
路子
ジャン=バティストに対するドヌーヴ、エリアーヌの溺れっぷりもすごかったけど、娘の婚約相手のお母さんに「男を忘れる方法は 知ってるわね」って言われて…。
放心状態で頷きながら、「無関心になること」って答えるんですよね。
りきマルソー
路子
そうそう。「フランス人の恋は理解できないわ 狂気と激情と苦悩の恋 戦争とよく似てるわ」、と言われてしまうあたりのやりとりが面白かった。
路子
ジャン=バティストにも似たようなことを言われているけれど、そこにはエゴイズムな側面があるような気がする。自分の思い通りに全てを動かそうという性格。
工場が火事になった後に、作業を再開させるシーンは、まさにそんな感じでしたね。
りきマルソー
路子
娘に対する執着もすごく感じる。
そうですね。娘に土地や屋敷を残すために銀行に掛け合ったり、とにかく自分の元へ帰ってきて欲しいという想いを伝えてますよね。
りきマルソー
路子
エリアーヌにとって、自由にさせることが愛というよりは、自分なりになにかをしてあげることが愛情表現の仕方なのかしら。
最終的には、自由にしてあげたということですよね?
りきマルソー
路子
というよりは、娘はもう手の届かないところに行ってしまったという方が近いかもしれないわね。
路子
りきちゃんは好きなシーンあった?
海域に迷い込んだ時に、ジャン=バティストがカミーユに水を飲ませるシーンがあるじゃないですか。
りきマルソー
路子
唾をあげるところ…が好きなんでしょう?
路子
(笑)。
(笑)。
りきマルソー
路子
水が無くなっちゃったからね。
なんてエロティックなシーンなんでしょう。
りきマルソー
路子
私もあのシーンはハッとした。
この映画の中で、そういうシーンって全然無いじゃないですか。
りきマルソー
路子
うん、性愛のシーンみたいなものは無いわね。
その中であのシーンだけひょいっと入ってきて。
りきマルソー
路子
命を救うためにやっていることだけれど、私もすごいなと思った。あのシーンにとても愛を感じた。
巻き戻して見直しました(笑)。
りきマルソー
路子
『インドシナ』はそういう映画ではありません(笑)。
~今回の映画~
『インドシナ』 1992年4月 フランス
監督:レジス・ヴァルニエ
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/ヴァンサン・ペレーズ/リン・ダン・ファン/ドミニク・ブラン