☆48本目『愛しすぎた男 37年の疑惑(ニースの疑惑 カジノ令嬢失踪事件)』
2020/02/06
【あらすじ】
カジノを経営するルネ(カトリーヌ・ドヌーヴ)。
経営が傾いているカジノをマフィアが狙っていますが、持ちこたえようと必死になっています。
そんな時、娘のアニエス(アデル・エネル)が離婚をしてニースへ帰ってくることになりました。空港へは顧問弁護士のモーリス(ギヨーム・カネ)が迎えに来ますが…。
路子
面白かったわね。
面白かったです。ギヨーム・カネのお尻綺麗でしたね。
りきマルソー
路子
あの身体にしては、ずいぶん肉付きが良かったわね。
やわらかそう。
前半のカジノのシーン、衣装と背景があまりにも煌びやかで、目がチカチカしちゃいました(笑)。
前半のカジノのシーン、衣装と背景があまりにも煌びやかで、目がチカチカしちゃいました(笑)。
りきマルソー
路子
時代設定の古い物語だと知らずに見始めたの。
37年前の話だったんですね。
りきマルソー
路子
電話も昔のだったわね。
録音の機械も大きかったですね。
30年以上前の話と、ラストに描かれる現代のシーン、見事な違いでした。
30年以上前の話と、ラストに描かれる現代のシーン、見事な違いでした。
りきマルソー
路子
歳相応ではあるけれど、ドヌーヴの老けメイクはすごく良かった。おばあちゃん役で存在感を出していたジャンヌ・モローの晩年を思い出したわ。そういう女優になっていくのかしらね。
女優の晩年って、ジャンヌ・モロー系の存在感タイプと、シャーロット・ランプリングのような良い意味で干からびたおばあさん系に分けられますよね。ドヌーヴはジャンヌ・モロー系。
りきマルソー
路子
枯れているか、ゴージャス系か。
そうですね。
りきマルソー
路子
老けのドヌーヴは本当に良かった。
そういう風にしていても、どこかしらに気品が感じられますよね。
りきマルソー
路子
そうそう、あるある。
物語としては、かつての生活と、現在の生活に差がある人物ですけれど。
りきマルソー
路子
きっと没落貴族のように、昔の生活で身についたものなのよね。前半は、実年齢よりも若い年齢の人物を演じるから、とても綺麗に描かれていたけれど、この年代のドヌーヴとしては、最近観た映画のドヌーヴの中で一番綺麗に見えた。
監督がアンドレ・テシネだからこそ、老けメイクをオッケーにしたんですかね?
りきマルソー
路子
多分ね。
相当信頼をしている感じですもんね。
りきマルソー
路子
そうなのよ。テシネの名前は、インタビューでも本当によく出てくる。
ギヨーム・カネも老けメイクをしていましたが、喋り方までは老けていなかったんですよね。同じ年数、歳を重ねたとは思えない。
りきマルソー
路子
そうそうそう。
ドヌーヴは声も変えてましたもんね。
りきマルソー
路子
私もそう思った。歳を重ねると、声も変わるものね。
一本の映画の中で、幅の広い演技をしていました。
りきマルソー
路子
やっぱりすごい女優。
何かあるとすればこの男、という感じは最初から感じられました。気持ちが悪いくらいに笑顔が怪しかったですもん。
りきマルソー
路子
モーリスとアニエスの恋愛もよくあるパターン。私たちの何かに引っかかってくるパターン。
(笑)。
りきマルソー
路子
それをやってはいけないのに…。
でもやっちゃうのよね、というパターン(笑)。
りきマルソー
路子
アニエスのことはどう思ったかしら? 結構若いのよね、30歳くらいの年齢設定?
そんなに上でしたか?
りきマルソー
路子
もっと若い?
1回結婚をしているって言ってましたね。
りきマルソー
路子
若くして結婚してそう。まあ逆算してみると…まだ20代かしらね。
ハリのある顔してますもん。
りきマルソー
路子
そういえば、おっぱいもぷよんぷよんしてた。結構いっちゃってる女性なのよね。『ベティ・ブルー』を観たことある?
ベアトリス・ダルのですよね?
りきマルソー
路子
そう。あの狂気に似ている。
美しさからすると、ドヌーヴの娘っぽくはないですが、見るからにしてそういう雰囲気が醸し出されていましたね。
りきマルソー
路子
アフリカダンスを踊るシーンや、ベッドのスプリングで跳ねるシーンがちょっと異様だったけれど、激情に駆られていく女性をそういうシーンで描いていたのかもしれないわね。
しばらく別の環境にいた人物でもありますし、カジノも嫌いだし、育ってきた場所も嫌だからこそ、離れていたのかもしれませんね。
りきマルソー
路子
元々自分に合わないところに生まれてきてしまったという感覚ね。
路子
モーリスの愛人、魅力的だったわね。
ルネの運転手の若い男の子も結構好きでした。
りきマルソー
路子
運転手の子ね!
とっても良い子だった。
りきマルソー
路子
ルネと一緒に車の中で「スタンド・バイ・ミー」を唄うシーン、良かったわね。
その時の映像もすごく綺麗でしたよね。
りきマルソー
路子
うん。海がずっと見えるのよね。彼がどうにかなると言うと、本当にどうにかなるような気がしてしまったわ。
ずっと重い話が続くので、良いアクセントでした。
りきマルソー
路子
意外とフリーメイソンのマフィアのドンが良い人だったわよね?
色々くれたり。
りきマルソー
路子
助言をしてくれたりね。
いわゆるドン、という感じでは無かったですよね。唄ったりして、気さくなイタリア男の雰囲気がありましたね。
りきマルソー
路子
良い感じだった。
路子
裸でするのは好みではないから、セックスシーンの撮り方はあまり好きではなかった。
ソファーでのシーンですね。
りきマルソー
路子
そうそう、全部脱いでしまって。裸で出迎えるあたりから、この女はやめておきなさい感が出てた。子どもなのよね。
考え方が?
りきマルソー
路子
全てが。
ベッドで跳ねたりとか?
りきマルソー
路子
うん。セックスはそれの延長線上。寝ると決まったら、全部脱いで、そのままセックスをする。なんだか幼稚な感じがする。
アニエスは、すぐに水に飛び込むクセがあったわね。
アニエスは、すぐに水に飛び込むクセがあったわね。
常に服の下にちゃんといつも水着を着ているのもおかしいですよね。フランス映画だから、裸で泳いだりしそうですけどね。オゾンだったら絶対に…。
りきマルソー
路子
裸で泳がす。
裸で泳がす。
りきマルソー
モーリスは、付き合う前にちゃんと予防線のようなものを張っているんですよね? 「言っておくが僕は要注意だ」と。
りきマルソー
路子
そうそう。恋愛において、彼はなにも悪くないのよ。
モーリスの愛人も、彼の恋愛観について助言してくれていましたよね。「恋多き男だけど どこの誰よりも自由を愛する人」だって。
りきマルソー
路子
だからアニエスのことをだまくらかしたりはしてないのよね。気持ちのバランスが取れなくなってきた時も、「君ほどは愛してない」と、はっきり言っているし。単なる計算だけで近づいたのではなく、少しは愛情があったのよね?
お金だけで近づいた訳では無いとは思いますが…。
りきマルソー
路子
もちろんお金は彼女の魅力のひとつかもしれないけれどね。
恋愛で盛り上がっている期間が過ぎた時と、お金の話が出た時のタイミングが、割と同じだった可能性はありますよね。
りきマルソー
路子
自殺未遂されたら引いちゃうと思う。大体、アニエスがモーリスの子どもの学校に行ってしまった時点でアウトよね。あのあたりから、モーリスもこれはまずい、今後もやっかいな存在になっていくと、思ったはず。だから殺してしまったのかしら?
あからさまにキスを避ける感じ。
りきマルソー
路子
分かるわよね。もう気持ちが無いんだものね。引き止めようと思っていても、もうすでに引き止められないパターン。でもやっちゃうのよね。なぜかしらね。
(笑)。
りきマルソー
路子
あんなにすぐに復活できるくらいだから、本気で自殺を考えていた訳では無いかもしれないわね。
弱い睡眠薬だ、とお医者さんが言っていましたね。『ハッピーエンド』の時にも話しましたが、自分を見てほしいがための自殺ということですか?
りきマルソー
路子
うん、構って欲しいという気持ちの表れ。周りが何も見えなくなってしまっている状態だと、さらに気持ちを離れさせるような行為とは気付かずにやってしまうのよね。
アニエスの中には、こうすればモーリスが戻ってくるというストーリーがあるんですよね。でも絶対にその通りにはいかない。
りきマルソー
路子
彼に「自由に生きてほしい」とは言っているけれど…。
不安定な精神状態の時、そんなこと思います?
りきマルソー
路子
「あなたを自由にしなきゃって私は思っているのよ」というのを訴えているのよね。
そうそうそう(笑)。だから本気で自由にさせたいと思っているとは思えない。
りきマルソー
路子
本当にそう思っているのであれば、あんな電話は掛けないものね。
あんな手紙も書かない。
厳しいことを言うとすれば、生きていたとしても、同じことを繰り返しそうですよね。
厳しいことを言うとすれば、生きていたとしても、同じことを繰り返しそうですよね。
りきマルソー
路子
それか殺傷沙汰になって、逆に彼を殺そうとしたりしてね。どちらにせよ、ドロドロは免れない。だからそういう男には手を出しちゃダメなのよね。
でも出しちゃいますよね。何でですかね? 何が良いんですかね? 自分に無いものを持っている感じが良いんですかね?
りきマルソー
路子
好きだと言ってくれるし、自分はこういう人間だと話した上で受け入れてもらえると、信じちゃうのよね。そこで信じちゃダメなのよ!
あっはははは!
りきマルソー
路子
恋愛遍歴を繰り返したり、複数の恋人を持つのであれば、見極めが大事。でもモーリスにはその能力が無かった。アニエスは、絶対に手を出してはいけない人物だと気付くべきだったのよ。私なら、アフリカダンスをするアニエスを見た時点で関係を終わりにする。自分の生き方を貫くのであれば、この人は危ないと思うもの。
ダンスを見て、魅力を感じちゃったんですもんね。
りきマルソー
路子
狂気を感じさせる女優を使いたかったという意味では。
ぴったりな配役でしたね。
りきマルソー
路子
目も恐ろしかったし、演技も上手だったと思う。モーリスの子どもの学校に行った時、泣いているのに心から笑えと残酷なことを言われ、笑顔を見せたでしょう? すごかった。
自分が愛される側からすると、一番ノーサンキューな人物。でも逆だとやっちゃうのよね。
自分が愛される側からすると、一番ノーサンキューな人物。でも逆だとやっちゃうのよね。
やります。私たちは、ああなるパターン(笑)。
りきマルソー
路子
本当にそうよ。気をつけましょう(笑)。私たち、この間、戒めみたいな映画を観たばかりなのに。
トリュフォーの『隣の女』ですね。
りきマルソー
路子
今までよく殺されなかったなあ。
路子
モーリスは、アニエスを殺したと思う?
私は殺しているような気はするんですよね。
りきマルソー
路子
でも、そういうシーンは全く出てこない。
バイクで走り去るシーンは、少し怪しい感じがしました。
りきマルソー
路子
そのシーンが唯一、暗示しているシーンなかしらね。
「私の道は ここで終わり あとはモーリスに任せる」と締めくくった遺書的な手紙が彼女の部屋の机に置いてあったのは、妙じゃないですか?
りきマルソー
路子
あれは自殺未遂の時に書いたものでしょう?
そうです。だからその手紙があの時に置いてあるのはおかしいな、と思って。
りきマルソー
路子
と、いうことは…わざとモーリスが机に手紙を置いたということ?
そういう風にも考えられますよね。
りきマルソー
路子
ルネが扉の下に手紙を置いていたでしょう? あれは心配だとか、愛情のことを書いた手紙なのかしら?
うん、そうだと思います。
りきマルソー
路子
そうかあ。あの時点で失踪となると、やっぱり殺されているかしらね。
最後が引っかかるんですよね。モーリスの息子の訴えにより有罪、懲役20年に至るというところ。
りきマルソー
路子
そうそう。息子は無罪判決を信じていたはずだけれど。
その後に、何かしらの真実を知ったということですか?
りきマルソー
路子
そうかもしれない。父親と話している中で、あれ?っと思うことがあり、確信したのかもしれないわね。
もしくは、裁判の時も実は真相を知っていたとか。
りきマルソー
路子
そんな様子では無かったような気がする。もっと複雑な感じだった。
裁判の後、モーリスの息子はモーリスに、「パナマにいれば送還されないのに」って言っているわよね。「皆 そう思ってる(疑っている)」とも言っているし。父親のことを信じたい、という気持ちはあったと思う。
裁判の後、モーリスの息子はモーリスに、「パナマにいれば送還されないのに」って言っているわよね。「皆 そう思ってる(疑っている)」とも言っているし。父親のことを信じたい、という気持ちはあったと思う。
路子
この作品でテシネが描きたかったことは、私たちがいつも話しているような、どうにもならないような恋愛のこと。もうひとつは母親の執念かしら。30年だものね。
モーリスが「30年つきまとわれた 俺は彼女の“運命の男”だ」って言っていましたね。
りきマルソー
路子
そこで「運命の男」と、言っているあたり、お前が犯人だろうという感じよね。
でも、そういう彼の性格を最初から見破っていたルネはすごいわね。最初は顧問弁護士として可愛がっていたけれど、モーリスが経営を手伝いたいと言ってきた時、即答しなかったでしょう?
でも、そういう彼の性格を最初から見破っていたルネはすごいわね。最初は顧問弁護士として可愛がっていたけれど、モーリスが経営を手伝いたいと言ってきた時、即答しなかったでしょう?
モーリスの野心的なものを怪しいと感じ取っていたんですよね。
りきマルソー
路子
結局は彼に負けてしまうことにはなってしまう。カジノも取られてしまって。
娘も取られてしまった。
りきマルソー
路子
娘が泣きながら電話しているところのテープを裁判中に聴いている時のルネの心情、想像するとやりきれないわね。そういうのを静かに表現していたわね。
裁判所では泣かずに、自分の家で泣くんですよね。肩を震わせながら。
りきマルソー
路子
人前で醜態を晒さないという、彼女の貴族的な気品のようなものが出ているわね。本当にドヌーヴは適役だった。
~今回の映画~
『愛しすぎた男 37年の疑惑』 2014年7月 フランス
監督:アンドレ・テシネ
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/ギヨーム・カネ/アデル・エネル