ゆかいな仲間たち よいこの映画時間

☆29本目『暗くなるまでこの恋を』

2020/02/06


【あらすじ】

文通相手のジュリーと会う約束をしていたルイ(ジャン=ポール・ベルモンド)。
しかし現れたのは、写真とは違う女性でした。
ふたりは結婚し、幸せに暮らしていましたが、ある日、ジュリーは口座のお金を引き出し、姿を消してしまい…。

路子
路子
トリュフォーとドヌーヴのコンビで作った作品は、これで何作目だったかしら?

1作目ですよね? これと『終電車』
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
それだけだけなのね!
途中、中だるみはあったけれど、面白かった。見どころがいっぱい。目の保養の為だけだとしても観た方がいい。女性はこの作品を観て、綺麗になりたいと思える。
『シェルブールの雨傘』はドヌーヴの初々しさを見ることができるけれど、美しいドヌーヴを見たければ、この映画はベスト5には入るわね。『終電車』はもっと内面の美しさを描いた作品だけれども、この作品は外側の美しさを徹底的に描いてる。
オープニングの車のシーン、青い空がとても綺麗に見える映像でしたね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
ドヌーヴのスッポンポンシーンもあったわね(笑)。
オープンカーで着替えているシーンですよね? 対向車線の車が、それに見惚れて事故っちゃうところ(笑)。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
大サービスだったわね。マリオン(カトリーヌ・ドヌーヴ)の奔放さを象徴するには必要なシーンだと思ったから、ドヌーヴも納得してヌード撮影を許可したのよね。


「愛は苦しい」というセリフ、良かったですね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
あんな風に愛されるのは、女のロマンですよ(笑)。
何が何でもぐらいの勢いがありましたね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
殺されても良いぐらい彼女のことを愛してる、ということでしょう? 完全にファム・ファタル。ドヌーヴは、悪女役が似合うわ。はまり役よ。
コロコロコロコロ態度が変わりますもんね。でも、『哀しみのトリスターナ』のトリスターナとはまた違う悪女性でしたね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
うん、全然違う。トリスターナはどちらかというと、おとぎ話の中の人物という感じがするけれど、マリオンはもっと現実的。私はマリオンの方が共鳴しやすいわ。
マリオンは誘惑の心得をちゃんと分かっているのよね。ルイが帰ってきたのが分かると慌てて着替えて…。
寝たふりをして待つんですよね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そうそう。笑っちゃうくらい面白かった。
恋愛には、やっぱりそういう駆け引きが必要なんですかね?
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
ファム・ファタルですもの。それが生きるということなのよ。ひじょうに勉強になる作品だわ。
なれるかな(笑)。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
なりましょうよ! 私も今から頑張っちゃう!


路子
路子
原題は?

り:『La Sirène du Mississipi』…『ミシシッピのセイレーン』ですかね?
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
セイレーンって、船乗りたちを座礁させて、男たちを破滅させる存在よね。
だからマリオンは船からやってくるんですね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そうそう。センスいいタイトルだわ。
邦題全然違いますね(笑)。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
本当よ。
ウイリアム・アイリッシュのミステリー小説『暗闇へのワルツ』が原作なんですって。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
その暗闇から、タイトルの「暗くなるまで」をとったのかしらね。
FRENCH BLOOMというところの映画の記事で、「トリュフォー没後30周年特集 トリュフォー映画の女優たち」というのがあるんだけど、その中ではこう書いてある。
路子
路子
「トリュフォー映画の女優たちは、恐らく自分たちのキャリアの中で最高の演技をしたのではないだろうか。例えばカトリーヌ・ドヌーヴ。『シェルブールの雨傘』で彗星のごとく現れたこの女優が、本当にフランス映画を代表する女優の地位を掴むことができたのは紛れもなくトリュフォーの映画に出たからではないか。もちろん、『暗くなるまでこの恋を』は「ご愛嬌」としか言えない。」
路子
路子
ひどい! まあ、『終電車』は本当に名作だものね。
ドヌーヴは、『暗くなるまでこの恋を』に出演したことを後悔してないんですって。当時のインタビュー記事に、こう書いてありました。
りきマルソー
りきマルソー
「フランソワは自分の作品に対して誰よりもきびしい批評家なので、あれは唾棄すべき失敗作だと自分から言っていますが、わたしはあの映画が大好きなんです。またフランソワとはいっしょに仕事をしたいと思っていますし、フランソワもわたしのために何か考えてくれているはずです。」
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
ふたりは3年くらいしか付き合っていなかったのよね?
たしかそうですよ。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
ドヌーヴから振っちゃうのよね?
そうなんですか?
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
大体そうなんでしょう?(笑)。
ふたりともすごく知性のある人だから、男女関係が無くなった後も、関係を維持できていたような気がする。
トリュフォーの本を読むと、トリュフォーは本当にドヌーヴにベタ惚れだったみたいですね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
本当に惚れて惚れて惚れてだったんでしょう? だって綺麗だったもの。


路子
路子
全然どういうストーリーかもわからずに見たから、どうなるんだろうって思いながら観てたの。

マリオンの顔を風景画に例えていくシーン、とても良かったですよね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
うん、すごく良かった。相手役がルイという名前だから、ラブラブシーンで、マリオンが「ルイ、ルイ」って言っているのか、「Oui oui(ウィー、ウィー)って言ってるのか、分からなかった。
たしかに。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
ルイの愛し方が全女性の好みかは分からないけれど、こんな風に愛されたら…。
全てを受け入れ、全てを許してくれる。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
本当に美しいからというのはあるけれど、何度も「君は美しい」というセリフが出てきたでしょう? こんなに「君は美しい」というセリフが出てくる映画は珍しいわよ。最後まで言い続けている。だからこの映画は、ドヌーヴの美しさで成り立っている作品ね。美しくなければ、ファム・ファタルとしても成り立たない。

路子
路子
レコードに自分の声を録音するシーンは、彼女の純粋な部分が描かれている部分だったわね。

作った後に、すぐに割れちゃうやつ(笑)。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そうそう。信じてもらえない女みたいなものを象徴しているシーンだった。
愛していると言いつつ、お金のことでもめたり、多面性はあるけれど、彼女にとっては、どれも真実なんですよね。少女性を持ち合わせているから、コロコロと変わることがあっても、嘘ではない。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そうそう。計算していることではないのよね。子供がよく言う、「あれが食べたい、これが食べたい」と同じ。それがやっぱりファム・ファタルなのよね。
この女のためだったら、命を捨てても良いし、殺されても良い、思わせるのがファム・ファタルの条件。男はそれに翻弄される。まさにトリュフォーは、ドヌーヴに対する自分の想いをこの作品に込めているんだな、というのがすごく伝わってきた。
「自分の撮る映画は私生活が影響している」と、トリュフォーはインタビューで話してますから、きっとそうに違いない。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
足のシーンがよく出てくるのも、やっぱり足フェチからきているのかしら。

足…というかハイヒールに関しては、戦争とお母さんの思い出が関係しているみたいですよ。
りきマルソー
りきマルソー


路子
路子
なぜこの作品は、トリュフォーの中でダメな作品とされているの? 納得できないわ。

あまり時間をかけられなかった、とは言っていますね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
映画としては陳腐ということかしら。
よくある感じってことですかね?ゴダールには、「ジャン=ポール・ベルモンドとカトリーヌ・ドヌーヴという二大スターを起用して、カラー・シネマスコープで、ハリウッドめいたブルジョワ映画をつくるとは何事か」と、罵られたそうですよ。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
たしかにゴダールは何かを言うだろうなという感じはする。人生の中で、なかなか出会えない運命の人との奇跡的な出会いを描いた単純なストーリーではあるけれど、陳腐ではない。でも、そういうものの中にも真実があったりするでしょう? 真実の原石みたいなものがいっぱいあったような気がする。ふたりが語り合うシーンが何回か出てきたけれど、全部好きだったもの。
ルイは弱い男だったと思う?
全然弱くないですよね。弱かったら、すぐに逃げたりしますもんね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
そうそう。すごく強い人だと思う。愚かなほどに。


路子
路子
ブログにも書いたことがあるけれど、トリュフォーだと『家庭』という作品が面白かった。特典で、トリュフォーがテレビ出演をした時の映像があったのだけれど、顔にいっぱい汗をかきながら話す不器用な姿に、とても感動したの。

手紙を書くのが好きだったみたいで、手紙を書く方が、自分の心が伝わると思っていたみたいなんです。そのテレビ出演の姿や、手紙の話を知ると、彼自身の人間のあたたかみのようなものを感じますよね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
芸術家のとんがったものがあまりないのよね。
トリュフォーきてますね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
世の中にではなく、私たちの中でね(笑)。


路子
路子
オススメ映画ね。ドヌーヴの美しさ、ファム・ファタルを学べる。あとは男の愛し方。ひとつひとつ顔を絵画に例えてくれたり、出会ったことを一度も後悔しないし、殺人まで犯してる。最後なんて毒まで盛られているのに。

それでも全てを許しちゃう。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
でも、それでも許す彼の心があったからこそ、マリオンの心は決壊したのね。初めて人を愛した瞬間だと思う。「あいしてるわ ルイ とっても あなたが信じなくても本当よ」と、言ったのに対して、ルイが「僕は君がいい 君しかいない 今のままの君が好きだ」と、返すシーン、本当に胸に沁みた。

マリオンが泣きながら「つらいわ これが愛? 愛はつらいもの?」と尋ねるんですよね。本当に名シーンでしたね。
りきマルソー
りきマルソー


路子
路子
ラストで山小屋を出て、雪が降りしきる中を歩いていくけれど、あの後ふたりは凍死してしまうのかしらね?

(笑)。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
あんな雪がすごいのに、あんな軽装で出掛けてしまって。心配だわ。
イヴ・サンローランの薄いコートでね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そうそう。あの後ふたりはどうなると思う?
同じことを繰り返すような気がします。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
また誰かを殺したりして、逃避行を繰り返すのかしら?
マリオンの態度とか。一度は愛を知ったけれど…。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
少女性を持っているから、これが欲しいのになんでお金持ってないのよー!みたいな感じで諍いになったり?
うん。繰り返す。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
こういう世界、やっぱりいいな。求めているものがある。
集結してる?
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そう。悪女性や人を騙眩かすことは除いて、女性の美しさやあり方や生き方が描かれている。愛されるためには、それなりのものを自分は作っておかなくてはいけない。
例えば、ふたりの生活が始まった時、マリオンが疲れた主婦みたいな存在だったら、ああいう風にはならなかったと思うの。誘惑したりして、常に完璧な姿でいるようにしている。だから愛されるためにはそういうものが必要なんだと思った。それにやっぱり、ああいう愛が欲しいんだな、と思った。

~今回の映画~
『暗くなるまでこの恋を』 1969年6月 フランス
監督:フランソワ・トリュフォー
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/ジャン=ポール・ベルモンド/ミシェル・ブーケ/ネリー・ボルゴー

-ゆかいな仲間たち, よいこの映画時間