ゆかいな仲間たち よいこの映画時間

☆53本目『真実』

2020/02/06


【あらすじ】

自伝本「真実」を出版する国際的に有名な大女優 ファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)。
出版祝いのため、娘のリュミール(ジュリエット・ビノシュ)とその家族が、実家へ戻ってきましたが…。

(ジャパンプレミアでの興奮冷めやらぬまま、映画の話に突入)
※まだ公開中・ネタバレ要素があります。

実生活と役柄を重ねないで欲しいと常々言っているドヌーヴには悪いのですが、実生活をより感じさせるような作品だと思いました。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
この作品は、ドヌーヴありきで、当て書きの要素が多いでしょう? ドヌーヴも一時期、自伝を出すか迷っていた時期があったというのを知っていると、すごくおかしかった。
実際に出版までいっていたら、映画と同じようなことが起こったでしょうね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
そうよね。あと、謝る事が苦手なのも似てそう。「あんなに浮気をしたのに、男に一回も謝ったことがないの?」って娘に言われるのも、ドヌーヴのことをこれだけ調べていると、映画の中の人物そのままのことが起こっているように思える。娘のキアラ・マストロヤンニとも、ああいうやり取りをしているのかもしれないわね。

路子
路子
ドヌーヴの繊細さが、とても引き出されていたわね。演技に対する恐怖心や、わざと転んで演じてみせる女優魂のようなものも描かれていた。自分ではすごく上手く演じたと思っていたのに、監督にもう少し抑えた演技をと言われて、すねちゃうのよね(笑)。

かわいかった(笑)。
女優の葛藤や、監督との意思の違いみたいなものが、ちゃんと描かれていましたよね。きっとドヌーヴ自身が普段思っているようなことも、描かれていたような気がします。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
わざとセリフを覚えないで撮影に行く、って何かで読んだことある。
演じる役柄に入り込めるように、って言っていましたね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
「母と娘の関係」もテーマだけれど、「女優の業」というのもテーマのひとつだと思ったの。
たしかにそうですね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
ファビエンヌが大事にしまっていたサラの洋服、『昼顔』の衣装に似ていたわね。
是枝監督もオマージュシーンを入れてるんですかね?
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
きっとあるわよ!
自分が思い描くドヌーヴ像をきっと持ってますもんね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
リュミールに良くしてくれていたサラおばさんって、あの人とかぶらない?
ドヌーヴのお姉さんのフランソワーズ・ドルレアックですね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そうそう。
私もそう思いながら観てました。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
飲み過ぎて海で溺れてしまった話をした時よね。車の事故とはなっていなかったけれど、亡くなった時の状況を彷彿とさせるような会話だったから、フランソワーズ・ドルレアックを意識しているように思えた。
ジュリエット・ビノシュはどうでしたか?
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
思っていたよりも、物足りなさを感じてしまったわ。
ビノシュの存在は、たしかに薄かったような気がします。でも、インタビューで「ドヌーヴの受け皿になってくれ」と、言われていたんですって。だから抑え気味だったのかもしれませんね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
イーサン・ホークの使われ方はどうだった?
あのフラフラしているような感じ、割と好きでし。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
イーサン・ホークは、アメリカでもフランスでも有名な俳優よね。
子煩悩の良いおじさんっぽかったですね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
ハンク(イーサン・ホーク)に才能が無いように見えたのは、売れない役者という設定だったからよね。
多分そうだと思いますよ。彼は娘には仕事だと話しているけれど、本当はアルコール依存症の治療をしている人なんですよね?
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
そうそう。ちょっと弱い男なのね。

サニエの使われ方は、ちょっともったいなかったですね。結構ちょい役でしたもんね。サニエ好きとしては、あのサラに似ているというマノン役こそ、サニエにやってもらいたかった!まあ、マノン役には、新人であまり目立たない人を持ってきたかったのかもしれませんね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
サニエがマノン役だったら、すごい演技をしそうね。
少ない登場シーンながらも、ファビエンヌとアンナ(リュディヴィーヌ・サニエ)のやりとりは結構好きでした。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
窓際で話しているシーン?
そうです。大女優と、ある程度地位のある女優が、新人女優についてグチっているところ。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
あのシーンは、きっとふたりに任せていそうね。
サニエもあんなことを言うような歳になったんだなぁ。昔はまだまだ子どもだったのに。それにしても、良い具合に干からびてきましたね(笑)。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
干からび過ぎて、マノン役の新鮮さが足りなかったのかも(笑)。

冒頭のシーンでファビエンヌにインタビューをしていた人って、『クリスマス・ストーリー』にも出演していた人ですよね?
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
キアラと結ばれるはずだった人ね! どこかで見たことがあるとは思っていたけれど、あの人なのね。
ドヌーヴ映画を追いかけてきた身としては、ちょっと嬉しいシーンでしたね。
フランスが舞台ではあるけれど、どこかしらに日本人が撮った感を、要所要所に感じてしまいました。
例えば、音楽の雰囲気や使われ方は、まさに日本映画的。映像に対して、音楽が強い。ダンスシーンの音楽は、その生演奏をシーンで使えば良いのに、と思ってしまった部分はあります。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
アコーディオンのところも?
生演奏のシーンなんだから、その雰囲気を大事にしてほしかった。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
たしかに、それはちょっと思ってしまったかも。

是枝監督の他の作品は観たことありますか?
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
『そして父になる』を観たことがあるわ。
その作品はどんな感じなんですか?
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
『真実』よりも、もっと重たいテーマだった。
今回の作品は、「真実」という割には、そんなに重くはなかったですね。もう少しサラについても、深く掘り下げて欲しかったというのが正直なところです。あとは、ラストに感動をぐぐぐっと、押し込んだ感じはあったかもしれません。「真実」というからには、もっと色々と迫って欲しかったですな。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
ヴェネチア国際映画祭での反応はどうだったのかしらね?

評判が良かった、というようなニュースは流れてきましたよね。ヨーロッパから見たら、いつものヨーロッパ映画とは違う雰囲気が、逆に新鮮なのかもしれませんね。
りきマルソー
りきマルソー

劇中劇のシーンが多かったですね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
サラの幻影としての存在であるマノンが出過ぎちゃう気が少ししたの。
彼女たちの中で大きい存在であった人物の幻影にしては、惹きつけるような魅力が物足りなかったですね。低めの声はとても好き。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
危うさや狂気を補うなら、やっぱりサニエがマノンを演じた方が、面白みは出たかもしれないわね。

(後日、撮影記録や、監督の映画への想いが綴られた『こんな雨の日に:映画「真実」をめぐるいくつかのこと』という本で予習をした私たちは、脇役だった男性陣にもスポットを当てた特別編集版も観に行きました。)

路子
路子
ドヌーヴはファビエンヌを自分とは違うと思っているけれど、かなり重なってると感じるでしょう? ドヌーヴそのものが表れているから、いくらフィクションだと言え、面白さを感じてしまうわよね。
ずっと最初のインタビューが続いている感じ。ドヌーヴのドキュメンタリーを観ているような感覚ですもんね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そうそうそうそう!
色々知ってから観ると、映画の見方がガラッと変わるんですね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
まあ、それが映画の正しい鑑賞の仕方なのかは、分からないけれどね。
映画自体を楽しんでいるかと言われれば、ちょっと違いますもんね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
嫌な評論家チックに観ていないか、不安になるわ。

でも、本を読んでからだと、細かい部分を違った目線で観てしまいますね。
りきマルソー
りきマルソー

ハンクの人物像が、より良くなった気がしました。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
是枝監督は、イーサン・ホークのことをすごく好きよね。
彼の演技に信頼を寄せていますもんね。シーンが増えてどうでしたか?
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
劇的に増えた訳ではないのよね。
最初の飛行機のシーンと、市場のシーンと…。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
違いを探せ! みたいね(笑)。
(笑)。
あとはベッドで買った人形の話をしているシーンと。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
川辺を親子で歩いているシーンよね。男3人の料理シーンも増えてた。
男性陣3人にスポットを当てたとは言っているけれど、ハンクの話が増えた、という印象でしたね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
あまり増えてはいないから、時間的にもそんなに変わらなかったわね。

路子
路子
本を読んだり、インタビューを読んだことで、ドヌーヴとビノシュの関係性についての知識が増えていたから、前回観た時よりも面白く感じたの。そういう知識があるから面白いと思う所に、自分の限界を感じるけれど、今回は「真実」とは何だろう、ということをすごく感じた。

私もそれは思いました。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
ラストシーンで和解をして、もっとこうしていたいと抱きしめている時のファビエンヌの気持ちは本物なのよね。でも、そこで気持ちが動いた時に、あのシーンでこの感覚を使えば良かった、と思うのは、女優としての性(さが)。それに対してリュミールは、裏切られたような気持ちになり、娘を使って仕返しをするけれど(笑)。
裏切られたと思ってはいたかもしれないですが、そこには前のようなトゲは無いような気がします。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
もうゲーム感覚。騙した?騙された?みたいな。そこに陰湿なものは無いのよね。表面上仲良くするよりも、最後に描かれているようなふたりの騙し合いみたいなものの方が、私はよっぽど好き。
『輝ける女たち』の時のドヌーヴに近いものを感じました。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
そうね。
言うところはちゃんと言うし、偽って云々というものが無いですね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
ファビエンヌという人物、良いわよね。当て書きだろうけれど、まんまドヌーヴだものね。
本でドヌーヴの行動について読んでいたので、鼻歌歌っているのとか、ずっとブツブツ喋りながらウロウロしたりしているシーンは、そういった実生活のドヌーヴの行動を反映しているんだな、と思いました。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
色々な鼻歌を歌ってるわよね。
良い女優を挙げていくシーンで、ブリジット・バルドーの名前があがると、かなりの勢いで、ないないって言っていたわね。ドヌーヴはバルドー嫌いだから、面白かった。
そのシーンであがる女優の名前は、製作前に是枝監督がドヌーヴにインタビューした内容が反映されていたわね。
撮影と並行して作られた映画だなって、所々で感じますよね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
前回観た時は、直前の舞台挨拶の感激が強かったから、客観的に観られなかったかもしれないわ。音楽は明るいのを意識して作ったと、書いてあったわね。しかもダンスシーンの曲名は「フランソワとフランソワーズ」。是枝監督が名付けた曲名で、『シェルブールの雨傘』で別れた2人がそれぞれの子どもにつけた名前なのよね!

親子の和解のシーンで、ドヌーヴの横顔が映るじゃないですか?
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
うん。
若い頃の顔が見えたような気がしました。それこそジャパンプレミアの時に路子さんが話していた走馬灯じゃないですけど、過去のドヌーヴの美しさが、シーンによって見え隠れするんですよね。それはやっぱり、私たちがドヌーヴを追っているからなんですかね?
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
きっとそうよ(笑)。
ドヌーヴはデビュー当時に演技指導も受けていないし、大根と言われたり、ただ美しさだけで勝負している、と言われたりしていたけれど、私は全然そう思わない。今日も彼女を見て、改めてすごい女優だと思った。
路子
路子
ビノシュはどちらかと言うと天然だと思っていたけれど、本を読んだことで、考え抜いた上で役になりきる努力家だと知ったの。それを意識してこの作品を改めて観ると、それが分かる気がした。

理論で演じることを考えていますよね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そうそう。
そう思うと、ドヌーヴってすごいですよね。そういう理論を考えずに、天然でやってしまうんですもんね。恐ろしい。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
夜にディナーの約束がある時は、テイクを早めにって言っちゃうし。
しかもそれで出来の良いシーンを演じてしまう。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
ますますドヌーヴを好きになっちゃうわ。

~今回の映画~
『真実』 2019年10月 フランス・日本
監督:是枝裕和
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/ジュリエット・ビノシュ/イーサン・ホーク/リュディヴィーヌ・サニエ/

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