エスプリのきいたひと、イザベル・ユペールに会いに。
2017/02/21
フランス映画祭。1993年から開催されているイベントだが、いくのは今年がはじめてだった。
目的は、イザベル・ユペールを生でみること。
「今年は団長がイザベル・ユペールで、映画(イザベル・ユペール主演の「愛と死と谷」)の上映後にトークショーもあるみたい。アヤちゃん行ったらいいわ」と路子先生が誘ってくれたのだった。
イザベル・ユペールといえば、フランスを代表する名女優。彼女が主演している映画、「ヴィオレッタ」や「間奏曲はパリで」はみていたけれど、そこまで猛烈に、好きだー!というわけではなかった。じっさい、路子先生に「イザベル・ユペールって知ってる?」って聞かれたとき、映画を見ていたのに、ぴんと来なかったくらいだもん。
それが、トークショーが終ったあとには、すっかり彼女のファンになっていた。
第一声は「サ・ヴァ?」。まるきり映画と同じ声なので、感激してしまった。
トークショーの最ちゅうも、一挙一動にくぎづけになった。
深緑色と黒のチェックのシャツに、ボトムは黒いパンツという、気取らないけど、おしゃれな装い。
話しながら左手で髪をくるくるしたり、
ほおづえをついて、横にいる監督の話をきいたり、
腕を組んだり、足を組んでみたり……
いつもどおりのユペールさんも、こんな感じなんだろうなあ、と思わせる自然なふるまい。
10メートル離れた距離から目をこらして見ただけだけど、非常に魅力的なひとだった。
彼女の人生についてはよく知らないけれど、すてきに歳を重ねているというのは素人目にもわかる。
決して、若づくりをしているわけでもない。 映画を見ていても、年輪(しわ)やそばかすが、ばっちりうつっていたもの。
あとから調べたら、もう60を超えていることがわかり、純粋に驚いた。
*
ユペールさんと同じ空気を吸っているという事実が嬉しいのであって、はっきり言って、トークショーの内容はどうでもよかった。
でも、会場からの発言と質問が面白かったので思わずメモを取ってしまった。細かい言葉尻は異なるだろうけど、内容だけちょっとご紹介。
進行の方が「それでは会場から質問をお受けしたいと思います……」といったとたん、我先に、と発言したのは、地方からわざわざ来ていた男性。
「ユペールさんのような有名な女優さんが出ている映画でも、まだ日本で上映されることは少なかったりする。特に私の住んでいるような地方だとなおさらそうです。ユペールさん、今回の来日は10年ぶりということですが、もっと日本に来てください! そうすれば、フランス映画界はもっと盛り上がる!ぜひ宜しくお願いします!!」と熱弁をふるっていた。
ユペールさんは「ダコ(OK)」と苦笑しながらも嬉しそう。
次の10年以内にユペールさんが再来日したら、この発言したひとのおかげかもしれない(笑)
そのあと何人か発言していたうち、ひとりは、なんと私の知り合いだった(姿は見えなかったけど、声ですぐわかった)。 ユペールさんの熱狂的なファンなのも知っていたから、間違いない。
まずは、「世界で一番大好きな女優さんに会えて最高の気分です!」と興奮した声でユペールさんへの愛を伝える知人。
そこでユペールさん「日本はいい国ね、日本に住むことにします」と返す。会場笑。
そして、肝心の質問は、”老い”について。
「今回の映画は、年を重ねた元夫婦の二人の物語、テーマのひとつに”老い”というのもあると思いました。 日本では”老い”にはネガティヴなイメージがありますが、フランスでは、どう捉えられているのでしょうか」
ユペールさんは、まず、老い=ネガティブというところで「え、そうなの?」と意外そうな反応を返したあと、「わたし、そんなに年はとっていないと思うけど。やっぱり日本に住むのはやめようかな(笑)」と肩をすくめた。
そのまま、話は別の方向に。質問の核心には触れず、フレンチジョークで返されてしまった。
かわすなんてずるい、会場の誰もがそう思ったはず。
いまのユペールさんが魅力的なだけに、彼女の意見を聞いてみたかった。
エスプリのきいたひとだった。
ユペールさんがどう歳を重ねていくのか、今後もひっそり見守っていこう。
そう思いながら、夢見ごこちで会場を後にした。
☆トークショーの内容、さっそくフランス映画祭のHPにアップされていました。
私が拾わなかった監督の言葉や映画「愛と死の谷」について、いろいろのっています。
こちらから。