MODEな軽井沢 特別な物語

◆ヴィヴィアンの希望◆2008.11.17

2020/04/22

「私が作る服はセクシーだということは、みなさんが知っていると思うの。セクシーであることは、いきなり裸でいることではなく、衣服を身につけていて、結果として脱ぎ捨てる過程の遊びであり、ドラマであると思うの」
 
女のドレスは男に脱がされるためにある。
そうでありたい、あってほしい、そうでなければならぬ。

と、常々思っている私にとって、ヴィヴィアン・ウエストウッドの言葉は、とっても共感できるものでした。

夏の終わりに公開されて、かなり話題になった「セックス アンド ザ シティ(SATC)」は4人の、もう若くはない女性の恋愛、結婚、そしてファッションがみどころの映画です。
主人公の一人、キャリーの豪華なウエディングドレスが「ヴィヴィアン・ウエストウッド」のもの。映画の公開と合わせて8月の終わりに東京、青山店のウインドウに飾られていました。

ヴィヴィアンは1941年生まれなので、現在は67歳。53歳の時に三度目の結婚をしています。相手は25歳年下の、もと教え子。
「ほとんどの結婚は妥協でしょう。だけど彼といても、妥協しなくてはならないと感じることがあまりないのよ」
結婚3年目のときに受けたインタビュー時の彼女の言葉ですが、わりとうまくゆく結婚生活(かんぺきな結婚なんてありえない)の真実が、あります。
ただ、同じインタビュー時、ヴィヴィアンの最後の言葉は……。少し長いけれど引用します。
***
のちほど、アトリエをあとにしようとする私のそばに、彼女が駆け寄ってきた。
「アンドレアス(夫の名)のことを過小評価していると思われたくなくて」彼女は言った。「彼は私なしでも類まれな才能を持ったデザイナーだってことを、あなたに知っておいて欲しかったの。彼を教えたこともあったけど、あれほど才能のあるひとに巡り会えることはめったにないのよ。あなたが帰ってしまう前に、それだけ伝えておきたくて」
そう言うと、真っ赤な羊皮のスリッパを履いたヴィヴィアン・ウエストウッドは、愛犬のアレキサンドラとともに、階段を駆け上って行った。
***

ここに私は、才能と名声に恵まれた一人の女の、物悲しさ……それは女としての弱さや媚びや慈愛、さまざまなものが混ざり合っているのだが……を感じました。

なんていうのは私の勝手な想像。

物悲しさなんて、縁のないように、ヴィヴィアンは精力的に動いています。
2009年春夏コレクションでは、増加する森林破壊、特に世界中の熱帯雨林問題に対して、人々の関心を集めるために様々な試みがなされました。「再生」にむけた前向きで想像力豊かなアイデアがそこにあります。

希望を捨てていないひとが、ここにひとり。

(参)「ヴィジョナリーズ」スザンナ・フランケル著
「世界のスターデザイナー43」堀江瑠璃子著

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