軽井沢ハウス

■1話■ 美しき「基礎」物語

2017/05/17

『軽井沢ハウス物語』

軽井沢の片隅にたたずむ一軒家「軽井沢ハウス」へようこそ。
この家創りの物語は、訪れた方に我が家をご案内する形で進んでゆきます。
想定季節はご自由に。我が家に遊びにいらしたつもりになって、読み進めてくださいね。
それでは早速、どうぞ、こちらへ。



外が明るいうちに外観からご覧いただきましょう。
「北フランスの田舎屋」を意識していますが、そんなイメージ、伝わりますか?
まずは下方にご注目くださいね。「石貼りの基礎」、いかがですか?



■むき出しのコンクリートは白いソックス■

とっても唐突ですが、欧米で一般的なホームパーティー、これが日本ではなぜ、いま一つ普及しないのか、考えたことはありませんか? 私は考えるのです。
パーティー好きの知人宅に招かれたときなどに、しみじみと。
日本人の性格や狭い住宅事情もあるだろうけれど、その隠れ原因の一つは絶対「靴を脱ぐという行為」です。
 
靴を脱ぐとどうなるかといえば、スリッパ姿、あるいは靴なし状態そのままです。
これはいけません。どんなにドレスアップしていても、足もとがそれでは何もかもが台無しです。
パーティー好きな人はおしゃれ好き
→おしゃれ好きな人は靴にこだわる
→靴を脱ぐ状況は気持を萎えさせる
→だったらそういう場には行かない。

この流れから日本にはホームパーティーが普及しないのだ、と断言したいわけですが、何が言いたいかといえば、ようするに、「家も同じことでしょう?」、これです。
というのも家をつくるにあたって、うんざりするほど膨大な数の雑誌を見ましたが、愕然とすることが一つ、ありました。それは「基礎」でした。
総煉瓦や素敵な色のサイディング、そしてログなどなど、素晴らしい外壁なのに、なぜか基礎はみな、そのまま。コンクリートむき出しなのです。
なぜ? おなかの底から不思議でした。なぜ、ドレープの美しいドレスやニットのワンピースに靴を履かず、白いスポーツソックスを合わせるのでしょう!
そうです。
私にはむき出しの基礎が白いソックスに見えてならないのです。
どう考えても合わない、かなりきついコーディネイト。
もちろん、スポーティーな服には白いソックスが似合うように、コンクリート基礎が似合う家もあるでしょう。けれど、そうでない家も、かなり多い。


■基礎はコンクリート。みんなそうですよ■

さて、私の家創りのパートナー、建築士の丸山輝彦氏は次のようにおっしゃいました。
「基礎はコンクリート、これ、普通ですよ」
「なぜ!」
「そこまでこだわる人はいないんですよ」
「混乱するほどに不思議です。みんなどうして平気なのでしょう。丸山さんは、瓦屋根から漆喰の塗り壁ときて、その下がコンクリートむき出しで美しいと思います? それともコンクリートを愛しているとか」
「いえ、特に愛していません」
だったら、ちゃんとストッキングと靴を履かせてあげてください。ガータベルトとまでは言いませんから」
 ここで、丸山さんが戸惑った表情をなさるものですから(当たり前)、私は白いソックスの話をしました。
「いやあ、おもしろい例えですね。でも基礎ですからねえ。そこまでしなくても。その予算を他に回しましょう!」
爽やかな笑顔でおっしゃる丸山さん……。
つまり、さらりとかわされたわけです。
けれど、私は諦められません。どうしても譲れません。
理由は単純、「美しくないから」です。
家の外観のかなりの部分を占める基礎は、美的観点から言って、かなり重要な部分、どうして放っておくことができましょう。

というわけで、お会いする度に
「しつこい女でごめんなさい、基礎のことですけど」
と迫ったのですが、その度に爽やかにかわされました。
丸山さんは、私の提案のほとんどに絶句しながらも「やってみましょう」と、まずは前向きで取り組んでくださいましたが、基礎だけは別でした。
なので、「基礎に石を貼りたい VS そのままでいいでしょう」の攻防は数ヶ月に及びました。
さて、この攻防、結局最後はこんな会話で決着がつきました。
「丸山さん、そこまで反対なさるのなら、仕方ありません。予算のこともあるでしょうし。私、自分で石を貼ります!(本気)」
「えっ。それはやめてくださいっ」
丸山さんは慌ててそうおっしゃいました。
せっかくの家を、素人の手仕事で台無しにされるのを恐れたに違いありません。
「わかりました。そこまでおっしゃるなら、やってみましょう」

■パートナーを信頼できるか否か、が鍵■

ここで、私の熱愛パートナー(だった、と過去形にすべきでしょうね、彼には彼の人生が……)、建築士の丸山輝彦氏をご紹介しましょう。

設計から家ができるまでの全てを担当してくださった方で、八ヶ月間、私たちは平均的な夫婦以上に濃密な時間を持ったと、私は一人勝手に思っています。
「家創りのパートナー」は、私のように建築士さんであったり、あるいは現場監督さん、営業マン、とさまざまでしょうが、大切なのはそのパートナーとの「信頼」関係です。
相手を信頼できるか否かが鍵なのです。
これは建材よりなにより大切なこと。
家創りを終えてみての、実感です。

そして私の場合、「いい建築士さんでラッキーだったね」、ではないのです。
なぜなら私は、会社の大きさや知名度ではなく信頼できる「人」を探し求め、出会うまでは妥協しない覚悟だったのですから。
ああ。
思い起こせば、家をつくると決めて、いくつかの会社を訪れていたあの頃。
私は基本的に性格がひねているし、実際何度か嫌な思いを味わっていたので、「建築会社の人間は基本的に信用できない」と思い込んでいました。
そんな中で丸山さんにお会いしたのですが、私はほとんど直感で、この人は信頼できる、この人とならいける、と判断していました。
同席の夫も同意見でした。
そしてその後、数度お会いする中で丸山さんがはったりと無縁な人であり、かつ柔軟な思考の持ち主であることを知りました。

 

■軽井沢の風土に適合していること 
        & 美的に軽井沢の風景に合っていること■

軽井沢に合った家をつくりたいんです。
ポイントは二つ。

一つは、軽井沢の「風土」に適合していること。
もう一つは、美的観点から軽井沢の「風景」に合っていること。
私にはイメージしかありませんから、共につくろう、と情熱を持って取り組んでくださるプロの方が必要なんです。
 
この人だったら……と、期待を胸に私が話したとき、丸山さんはしばらく考え込んだ後、おっしゃいました。
「おもしろそうだ、やりましょう!」
とはいえ、こちらの予算はけっして充分ではなかった(というより少ない)ので、これをクリアするために、私は「ときには娼婦のようになります」じゃなくて「完成後のモデルハウス、取材協力等いたします」といった契約を交わしました。
 
丸山さんは次々と私が提案する「難題」(「基礎」問題は好例)の前で、「いい家をつくりたい、でも予算が……!」の苦しみに何度悶絶なさったことでしょう。
けれど後半は私以上の情熱で軽井沢ハウスに取り組んでくださったのです。


★★コラム★★「北フランスの田舎家」って?★★

全体的なイメージはずばり、「北フランスの田舎家」です! と丸山さんに伝えたとき、彼は「なんですかそれ」といった表情をなさった後、「南欧風とかプロヴァンス風だったらわかるんですけど」とおっしゃいました。
「それ! それです!」と私は身を乗り出しました。
「それだけはバツなんです!」
私はフランス好きですけれど、冬の寒さが厳しい軽井沢に、プロヴァンスが似合うとはどうしても思えなかった。

「北フランス」とわざわざ限定したのは、それを主張したかったこともあるのです。
反抗的な態度、とも言えます。
本文にもある通り、「軽井沢」で家を建てるなら、そこに似合う家にしたかった。
そして自分のヨーロッパ、特にフランス好みをからめると「北フランス」が、豪邸ではなく小さな家がいい、ということで「田舎家」が浮上した、というわけです。
三角屋根で二階は屋根裏部屋のようなかんじで。
全体的に凹凸の少ないごくシンプルな形。
完成後、「ドイツっぽい」とヨーロッパ通の知人に言われたときも嬉しかったけれど、
「ああ、フランスの郊外の家、ってかんじ」
と、フランスに暮らしたことのある友達に言われたときは、彼女に抱きつきたいくらいに嬉しかったです。
ギリシアっぽい、とかシチリアっぽいと言われたらショックだと思います。

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