軽井沢ハウス

■4話■ 「非日常よりも日常」の小さな「玄関」物語

2017/05/17

お待たせしました。それでは家の中へどうぞ。赤い玄関ドアを開けて……。

■赤いドアには夢がある■

このドア、当初は焦げ茶色に塗る予定だったのです。けれど、アンティークショップで赤いドアを見てしまい、それが衝撃的なまでに素敵だったものですから、「我が家のドアも赤にしちゃおう!」と、直前になって変更したのでした。
塗装の大西さんに数種類の「赤」色を出してもらって、ようやくこの「赤」に決まりました。予定通り焦げ茶にしたら、それはそれでシックな仕上がりになったでしょう。
けれど、赤いドアって、なんだか夢があるわ、と私は思い込んでいるし、全体のバランスからしても、アクセントとなっていると思っています。
一枚のドアですが、外側は赤、そして内側は予定通り焦げ茶色。全部赤に塗るかどうかは、迷うところでしたが、ドアを閉めたときの玄関の雰囲気で、決めました。
ドアノブはフランス製。これは、幾夜にも及ぶネットサーフィンで「発見」した、「安く」て好みに合ったドアノブでした。
ほとんど憑かれたように、ネットでドアノブを探したあの日々は無駄ではありませんでした。かなりかなり辛かったけれど。
「もう嫌~、なんでこんなことしてんだろ。いいかげん、そのへんので妥協しろよっ」
と自分につっこみながらの、ネットサーフィンでしたけれど。

■日常を優先させるから狭くていいの■

さあ、こちらが玄関です。ちょっと狭いですよね? ホールも狭いでしょう?
でも、私たちは三人家族なので普段は広いくらい、とは言い過ぎですが、ちょうどよいのです。
それに軽井沢は冬がとっても寒いから、いつもいないところはなるべく狭くしたかったのです。
「とにかく、玄関は家の顔。他はダメでも玄関だけは吹き抜けに!」あるいは「玄関だけは、とにかく、できるだけ広く!」といったことを希望する方が多いようです。いえ、それを否定するつもりは全くありません。
ただ、これは「お客様」を意識した考えのように思えます。私は「お客様」より「自分たち家族」を優先させました。
「非日常」よりも「日常」を優先させた、とも言えます。
 毎日の自分たちの生活を考えてみれば、広い玄関、広いホールは不必要だった、ということです。
「日常を優先させる」。
この考えは、家のいたるところに反映しています。

さて、玄関は北西に位置していますから暗くなりがち。そして、そんな場所こそ、明るくしたい、と熱望するのが人情というもの。ところが、大きな窓は好みではないし、防犯上もたぶんよろしくない。どうしたものかと考え込んでいたところに、丸山さんからガラスブロックの提案をいただきました。
これ、アクセントにもなって、採光できて、開けたり閉めたりが必要なくて(ここ、ポイント高い)、とっても気に入っています。
正面にはステンドグラスをはめこみました。当時中軽井沢にあったアンティークショップで購入したものです。

このステンドグラスに出会ったのは、まだ家の設計段階でした。
お店の床に三枚(大きさも模様もバラバラでした)無造作に置かれていたものに、なぜか目をひかれ、安価だったこともあり、「どこかで使おう」と買っておいたものです。残りの二枚はダイニングで使っています。
「まだ何も決まっていない時期にステンドグラスを両手にぶら下げていきなり会社に来て、『これ、どこかで使いましょう』と置いていったときには本当に驚きました」とは、丸山さん談です。
そうそう。忘れるところでした。ここで、夫の名誉のために書いておかなければ。
実は先ほどの面格子のデザインは、このステンドグラスがヒントになっているのです。


これからも(数少ないながら)要所要所に登場し、貴重な意見を提示する夫ですが、このときも、「面格子、ステンドグラスに合わせたデザインはどうかなあ」とつぶやき、これが野本氏にインスピレーションを与えたのでした。

■シューズボックス■
 
軽井沢はとても湿気が多い。だから私は湿気がこもらないように、ルーバー調にしたかった。ショップ、ネット、通販雑誌、あらゆるところで、何ヶ月も入居寸前までねばって、探しました。そして結果は、バツ。
シューズボックスって、どうしてつまらないデザインばかりなのでしょう! 独創的なのがあってもいいじゃないのよ、と憤慨したいくらいです。
かといって、オーダーする予算もなかったので、仕方なく、ごく普通の安いルーバー調のシューズボックスを購入しました。

そして、アイアンパーツを扱っているネットショップで取っ手を購入、付け替えたのです。やはり、ぐんと雰囲気が変わりました。
気に入ったものがなければ、シンプルなものを購入し、それに自分で手を加える。これは妥協ではなく、オリジナルなインテリアを楽しむ一つの方法である、と理屈をこねさせてください。
とはいえ、このシューズボックス、「とっても気に入っている」と言うと嘘になります。平均点ぎりぎりクリア、といったところでしょう。

 

★★★「古くて、暗くて、狭い家」が欲しい★★★
 
「古くて、暗くて、狭い家が欲しいんです」。
このように、私が言ったとき、丸山さんはおっしゃったものです。
「だったら、中古を買ったらいかがですか。ごめんなさい、冗談です」
たぶん、冗談ではなかったと思います。
さて、私は自分の言ったことが相手を戸惑わせていることは自覚していますので、ちゃんと説明を試みました。
①まずは「古くて」からいきます。
私、いかにも新築、っていう家が嫌いなんです。ぴかぴかのダイニングとか、そういうのが嫌いです。できた瞬間から、もう何年も住んでいるかのような、そんなのが理想です。
②次は、「暗くて」です。
たとえば、陽が差し込んで眩しい部屋は嫌いです。薄暗いくらいが好きです。夜は夜で蛍光灯の灯りは嫌いです。白熱灯の柔らかな灯りが好きです。
③最後に、「狭い」について 。
広々とした部屋が嫌いです。ほどよい「囲まれ感」がポイントです。私は「日常」を重視するので、普段は三人しかいないんですから、狭くていいんです。稀に多くの人が訪れたときは「今日は狭いわね」と思えばいいのです。
④おまけ
それから、全体のイメージとして「ナチュラル」が大嫌いです。よろしくお願いします。

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