軽井沢ハウス

■12話■ あなどれない「カーテン」物語

2017/05/17

カーテンに「赤」を使うのは冒険でしたけれど、暗めの赤色にしたのでそれほど派手にはならなかったように思います。家創りの「おまけ」のように思いがちなカーテンですが、これがかなり手強かったのです。

■カーテンは高い■
 
我が家は窓の面積が少ないので、それほどではありませんが、たいていの家は窓の面積が広い。それを覆うカーテンとなると、カーテンが、その部屋のイメージを決定するといっても過言ではありません。
だからエナジーを注ぎたいところではあるけれど、しかし! 価格表を見るといきなり萎えてしまう。これが現実です。
先日も、家創り真最中の女性がおっしゃっていました。
「本当に気に入ったものじゃないと毎日、あーあ、とため息をつく結果になるでしょう? そして気に入ったものは、目が飛び出るほどに高価。いっそのこと、障子にしてしまおうかと思っているのよ」
痛いほどにそのお気持ち、わかります。
「カーテンをあなどってはいけない」。
最初からカーテンを手強い相手、と考えていた私は、かなり早い段階から、カーテンを物色し始めていました。これは、と思うお店に足を運んだり、カタログを借りてきたり、ネットで「激安カーテン」を検索したり。
けれどやはり「これがいいっ」と思うものは、スペイン製とかなんとかで、たとえば、このリビングとサンルームを仕切る窓(というか引き戸)にそれを使うとなると、それだけで十万円を余裕で上回る。ダメダメ、ダメです。我が家のカーテン予算は二十万円なのですから。もちろんレールもすべて入れて、です。
丸山さんにその数字を言うと、「はっはっは」と笑われてしまいました。
「価格を低くおさえても、たいてい一軒の家に三十万はかかりますよ。ましてや、山口さんのお気に召すような(このあたり大変意味あり風におっしゃる)ものとなれば、四、五十万は覚悟したほうがいいなあ」ですって。

■アイアンのカーテンレールとホルダー■

丸山さんのお言葉に私はかえって、ファイトをかきたてられました。
そしていつものようにまずは理想から入りました。ありとあらゆる雑誌からイメージに合うものを選び出し、それに沿って進めることにしたのです。
カーテンレールは全体のイメージからアイアン製、と決めていました。ところがカタログを見ると、これまたびっくりするくらいに高額。レール一本にそんなにかけられません。
そこでまたしても、夜な夜なネット検索をするはめになりました。それでもやってよかった。アイアンレールを格安(たぶん)でつくってくれるところを発見し、カーテンホルダーも、こちらで注文しました。
そうそう、カーテンホルダーもこだわりはありました。というのも、私はあの「ふさかけ」が大嫌いなのでした。
理由その①あの甘さ、装飾過多が好みではない。
理由その②かける手間がかかる。毎日それをやりたくない。
というわけで、ひょい、とかけるだけでオッケーのホルダーを探していたのです。

■価格のメリハリをつけることで■

さて。カーテンですが。さんざん迷ったあげくに、「かけるところにはかける、かけないところには、かけない」(お金と場所の両方を指します)という方針を定めました。
つまり、ダイニング、リビングは、気に入ったものを多少高額でもつける。ベッドルームは安価なもので我慢、二階の書斎は外の景色を見ることにする(つまり、つけない)。
ゲストルームだけは趣を変えて和柄のロールスクリーンにしました。
このように、精一杯がんばってはみたのですが、やはり予算オーバーは免れませんでした。カーテン。手強すぎる相手でした……。

■軽井沢ならではのカーテン■

気を取り直してまいりましょう。
こちら、ダイニングのカーテンをご覧ください。これは、安い「なんちゃってヴェルヴェット」の緑をベースに、ちょっと値のはる輸入生地を重ねていますので、全体としては一番高価なものとなりました。理想にかなり近い仕上がりです。
リビングも「なんちゃってヴェルヴェット」の深紅に緑のトリムを縁取りしました。これも理想に近いです。
どちらも私のオリジナルデザインということで、プチ・デザイナー気分を味わえました。
「でも、それにしたって! これだと夏は暑苦しくない?」と、夏以外の季節に言われることがあります。
私はここで、、待ってました、とばかりに不敵な笑みで答えます。
「ぜんぜんっ」
だって、軽井沢ですもの。ノー・ストーヴの日がほとんどない、軽井沢ですもの。日中は暑い日はあっても、夜暑い日がない軽井沢ですもの。問題なしです。

■布フェチ物語■

もしかしたらカーテンに最初からこれほどこだわっていたのも、私が布フェチだからかもしれません。
ほんとはもっと色んなところに布を使いたいのだけれど、煩雑な風景になってしまう恐れがあるので、抑えているのです。

レコードプレーヤー、そして写真などが飾られた家具の上にも布が使われています。
私が鼻歌を歌いながら、それらの布をかぶせているとき、夫はおそるおそる言ったものです。
「この部屋にその布は合わないのでは」
確かに。北フランスではなく東洋っぽいですから。でも、好きな柄なのです。そこで私は言いました。「オリエンタル趣味の北フランスの家だと思ってね」
写真が飾ってある家具は、実は両親から譲り受けた四十年前のステレオ。残念ながらもう使えないけれど、思い出という意味とデザインが気に入ったことから、リビングで残すことにしました。

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