◎Tango ブログ「言葉美術館」

■8月3日、タンゴ記念日

 

 8月3日はタンゴ記念日ですね、とお友だちから数週間前に言われて気づいた。言われなければ通り過ぎていたかもしれない。めまぐるしい日々が続いているから。

 そうか、8月3日は私のタンゴ記念日、と意識し始めてから、いろんな場面でタンゴ以前の人生とタンゴ以後の人生、なんてのを考えている。

 1年前の8月3日の記事を読み返してみる。ありありと、2年前の、はじめてタンゴを踊った夕刻が甦る。

 あの驚き、発見。それは色褪せてはいないだろうか、と自問する。色褪せてはいない。色褪せようもない。

 あれから2年。「初心者なんですぅ」という逃げが通用しない年数を経過してしまったことに内心、ちぇ、とお行儀悪い舌打ちをしつつ、やはり人生って何が起こるかわからない、としみじみもしている。

 あのときは、まさか、自分の仕事場の階下に、私をタンゴの世界にいざなってくださった、なかやまたけし先生の「タンゴサロン・ロカ」がオープンするなんて、想像もしていなかった。

 LOCA。スペイン語で狂女、クレイジーなオンナを意味するこの言葉をサロンの名前にする、と聞いたときは、いったい……なぜ……と疑心暗鬼、深読みしたものだったけれど、先生は、響きがいいし、タンゴバルドのLOCAが好きだし、とかるくおっしゃったので、深読みはやめることにした。

 でもロカなんだから、そこでなら、どんなでも許されるような、そんなかんじもしている。名前って大事。いまは名前が「ロカ」でほんとうによかった、と思っている。安心。

 仕事の状況で週に2度、あるいは1度、ロカに降りてゆく。けっして広くはないけれど、独特の空気感があって私は好き。先生ご自慢のスピーカーの音響も大好き。集う人たちも好き。

 そう、それから。

 あのときは、まさかブエノスアイレスに行くなんて想像もしていなかった。

 先生とお友だちとゆくブエノスアイレス、タンゴの旅行まであと一ヶ月半。実感がわかない。私はなにもかも、そう、ほかのことをぜーんぶ、ほおりだして、ブエノス、そしてタンゴに溺れてしまいたい。ぶくぶくと。

 タンゴを踊っているから知り合えたお友だちも多い。

 軽井沢移住をしたとき、東京にいるときよりも、気の合う人に出会う確率が高い、と思ったものだったけれど、それと似たことが起きている。仕事とまったく関係のない人たち、タンゴという共通項で結ばれている人たち、彼ら彼女らとの間に生じる交流の熱みたいなものは、ほかでは体験しえないものだ。濃厚。

 赤ワインをふたたび飲むようになり、酔うということの心地よさをふたたび、この人生で味わうことができるとは、これまた想像もできなかった。それに付随するあんなことこんなことも。

 もちろん、私なりに、さまざまな摩擦を感じて、たまに擦り傷をつくったり、たまに涙したりもしている。たのしいたのしい、だけではない、当然のことだ。でもどんなにどろどろしたことも、どんなにかなしいことも、もちろん快楽も、すべてひっくるめてのタンゴ、だから飽きない。

 そう。飽きない。これが私にとって最大のポイント。

 知れば知るほどに、底なし沼みたいに思えてくる。知れば知るほどに、その奥深さに驚嘆する。知れば知るほどに、焦がれてしまう。

 今日は起きてからずっと映画「ラスト・タンゴ」のサウンドトラックを流している。なつかしい香りがすでにしている。

 写真は、さきほど撮ってきたタンゴサロン・ロカの昼下がり。

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