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▽ニュー・シネマ・パラダイス(「映画音楽と物語」より)

2017/02/20

 ニューシネマパラダイスという名の映画館を舞台にした、年齢が親子以上に違う、けれど映画をこよなく愛するということでは一致している二人の男性の、ちょっと変わった、けれど厚い友情を描いている1988年のイタリア映画。監督はジュゼッペ・トルナトーレ。

 どんなに冷酷なひとでも必ず涙するというラストシーンなど、多くの名場面がありますが、今日はこの映画のなかの有名なおとぎ話をご紹介しましょう。

 はじめての恋に苦しんでいる青年トトに、老人アルフレッドがするおとぎ話です。ふたりは道端の石段に腰かけて、最初は、適当に話を聞いていたトト青年が、アルフレッドの語り口調と、その内容に次第に引き込まれていきます。

 昔々、とあるところの王様がパーティーを開きました。国中の美しい貴婦人が集まりました。ある兵士が偶然、王女が通るのを目にしました。国中の美しい貴婦人たちのなかでも王女が一番美しいと兵士は思いました。ひとめで恋におちてしまったのです。けれど王女と兵士ではどうしようもありません。
 それでもある日、兵士は王女に思い切って声をかけ、王女なしでは生きていけないと言いました。王女は兵士の深い想いに驚き、こう言いました。

「100日間の間、昼も夜も私のバルコニーの下で待っていてくれたら、あなたのものになります」

 兵士はすぐにバルコニーの下に行きました。二日が経ち、十日が経ち、ひと月が経ちました。毎晩王女は窓から兵士を見ていました。兵士は雨の日も風の日も雪が降っても、蜂に刺されても、その場から動かず九十日が過ぎました。兵士はひからびて真っ白になり、目から涙が滴り落ちました。涙をおさえる力もなかったのです。王女は兵士をずっと見ていました。

 九十九日目の夜、兵士は立ち上がりました。そして椅子を抱えて、その場を立ち去ってしまったのです。

 こういうおとぎ話です。

 真剣に聞いていたトトは、なぜ最後に日に行ってしまったのかとアルフレッドに尋ねます。けれどアルフレッドは、わからない、わかったら教えてくれと言うのでした。みなさんはなぜだと思われますか?

 トトの考えはこうです。

 一年ちょっと経ち、トトの初恋は、かなりひどい状況で破局。そのときトトはアルフレッドに言うのです。

「兵士が待たなかった訳がわかったよ。あと一晩で王女は彼のものだ。でも王女が約束を破ったら絶望的だ。彼は死ぬだろう。99日でやめれば王女は自分を待っていたと思い続けられる」

 いかがですか?

 この映画は名セリフの宝庫でもあります。今日はそのひとつをご紹介します。

 トトとアルフレッド、駅のホームでの別れのシーン。アルフレッドがトトを都会のローマに送り出すという場面。

 アルフレッドはトトは大物になると信じています。だからこそ、田舎町に未練を残すトトを、ほとんど強引にローマに旅立たせます。ローマに行ったらこんな田舎町のことは忘れろ、手紙もいらない、とにかく忘れろ、ホームシックになっても帰ってくるな、と厳しくいい聞かせ、それからこう言います。

「何をするにしても自分のすることを愛せ」

 

♪作曲 エンニオ・モリコーネ 作詞 森寧子(岩谷時子)「ニューシネマパラダイス 愛のテーマ」をお聴きください。

★2016年12月21日「語りと歌のコンサート~映画音楽と物語」台本より。

別の視点。ニュー・シネマ・パラダイスの記事はこちら。

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