ゆかいな仲間たち よいこの映画時間

☆42本目『永遠の語らい』

2020/02/06


【あらすじ】

パイロットの夫を訪ねるため、歴史学の教授であるローザ(レオノール・シルヴェイラ)は娘のマリア(フィリッパ・ド・アルメイダ)を連れ、船旅でインドのボンベイへ向かいます。
美しき歴史的建造物を辿りながら目的地へと向かいますが…。

この映画については、路子さん、ブログに書いていますよね?
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
うん。詳しくは書かなかったけれど、とても良い映画だと思ったの。今回は2度目。ラストを知っていてもドキドキしてしまったわ。
ちゃんと区切られている訳ではないですが、第1部、第2部、第3部みたいな作りなんですね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そうそう。こういう映画の作り方は、珍しいわね。
急にがらっと話が変わりますもんね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
好きなように作っているなって思う。
やっぱりオリヴェイラ監督の作品は、演劇的な作りですね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
でも映画的には残るでしょう? 重たかった…。同じ監督でも、『メフィストの誘い』は笑えたけれど、この作品は笑えないもの。
微笑ましいとは思いましたが、笑うようなシーンは無いですからね。
最初に話の結末を予言するかのような『大災害の前では人間なんて無力なの』、というセリフがありましたよね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
でもそれは自然災害のことよね。ポンペイに行く時のセリフね。
まあ、たしかに。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
戦争のことも話してるわよね。だから全てのセリフや展開に含みはあるのよね。

第1部は親子での観光。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
出発地がポルトガルで、エンリケ航海王子やヴァスコ・ダ・ガマがインド航路を発見するけれど、乗っている船は、昔の新航路発見の道を辿っているわけね。親子が向かっているのはインドのボンベイ。過去に栄華を極めた遺跡を巡るけれど、その中にはヨーロッパ文明があり、イスラム世界がある。世界史のお勉強になって良いわよね。
全部教えてくれますもんね。子ども相手に話していることだから…。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
分かりやすい。
第2部は談話。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
全員が違う言語で話すのよね。

聖書の「バベルの塔」みたいでした
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
テーブルを囲む3人の女性は、実際にそれぞれの国を代表する人なんでしょう?

そうなんですか?
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
すごくゴージャスな使われ方をしているというのを、映画の説明で読んだことはあるけれど。

その3人がひとりずつ小話みたいなものを話していくシーンがありましたが、その時に名言のようなものを言っているんですよね。
りきマルソー
りきマルソー

大企業の女社長 デルフィーヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)は
「どんな魅力的な男でも 女を泣かせるものよ」

イタリア人のモデル フランチェスカ(ステファニア・サンドレッリ)は
「愛こそが暴君なの」
それに対して、デルフィーヌが「情熱が女性を囚人にするのよ」と答える。

女優で歌手のヘレナ(イレーネ・パパス)は
「満ち足りた人生を送る者は 幸せになれる機会が多いと思うけれど 深い悲しみも味わうし 裏切られる苦しみもあるわ」

りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
たしかに私も記憶にある言葉だったけれど、書きとめはしなかった。オリヴェイラ監督のセリフって、あまり刺さらないの。なぜかしら。これがトリュフォーの映画なら、そうは思わないのかしら。
バンって目の前に叩きつけられている感じですか?
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
自分より人生経験の多い人に、「そういうものよ」と、言われている感じがするの。
じいさんの教訓みたいなものですか?
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
じいさんの教訓というか…(笑)。
「そんなの分かってるわよ。分かっているけれど、ジタバタしちゃうんじゃない!」、という感じ? 反抗的に思っちゃうみたいな。
お母さんに言われるお小言みたいなものですかね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
近いかも。でも、言葉遊び的なものも感じるのよ。
これどう? ねぇ、これはどう?みたいに勧められているみたいな感じはありますよね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そうそう。事前に用意されていて、気の利いたことを言ってやろう!と、いう感覚に近い。
おしつけがましいというか…。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
あとは自慢。良いこと言ってるでしょう?みたいな。
やらしぃー(笑)。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
テーブルで話している女性3人が、何か気の利いたことを言ってやろう、という風に見えるの。
まあ、この時は順番に語りましょうのコーナーでしたもんね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
スピーチだものね。
そうそう。だからそういう風に感じたのかもしれませんね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
『メフィストの誘い』を観た時もそうだったけれど、こういう映画を観ると、虚しさを感じる。
明日何が起こるかわからないじゃないですか。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
うん。
そう思うと、細かいことでグジグジしているのが馬鹿らしくなってきますね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
今日だけを生きよう、という気になってしまうわよね。そこにいってはいけないような気もするけれど…。

路子
路子
ギリシャ語、イタリア語、フランス語、英語で話をしていたけれど、全員が全部話せるということでは無く、そのあたりはうやむやになっていたのよね?

何語は喋れなくて云々みたいなやり取りなかったでしたっけ?
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
ポルトガル語?
って言ってなかったでしたっけ?
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
親子が話すポルトガル語は、3人の女性のテーブルに合流してからは出てこなかったわね。
路子
路子
合流前、順番にスピーチをしている時に「違う国に生まれた4人(3人の女性と船長)がそれぞれ自国語を話しているのに、会話が成立するなんて」みたいなことを言ってたわ。その後に「知的な女性たちの間には 障害となるものなどないの」というセリフが出てくる。それって、話せはしないけれど、なんとなくの雰囲気で聞き取れる程度ということよね。「単語の40パーセントのルーツはギリシャ語なの」というセリフにもあるように、ひとつの言語から派生しているから、そこでの共通言語のようなものを表現しているのかな、と思ったの。

そこに異色である英語が入ってきた、というのをアメリカ人の船長という形で表しているんですね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そうなのよ。そしてアメリカ人の船長さんが女の子にプレゼントしたお人形さんが原因で、親子は助からないのよね。
そうですね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
きっとそこにも何か意味があると思う。

路子
路子
映画だし、という目で見てしまえば、色々な矛盾点があっても、表現したいことがあったらしょうがないとは思うけれど…時限爆弾の時間が無いのに、最後までヘレナに歌わせるなんて、ずいぶんと余裕よね。

そうですよね(笑)。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
一刻を争う時でしょう?
たしかに。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
後からそんなことを思ってしまったわ。乗客の名簿とかを確認してボートに乗せないのかしらね?
そこまで時間がなかったってことですかね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そうねえ…。
ラスト、船長のストップモーションで終わるでしょう? あの時の顔は、9.11の時のアメリカ人全員の顔を代表しているような気がするの。そういう意味では、すごい終わり方だと思った。
一番生き残って欲しいと全員が思う人が、死んでしまうのよね。
世の中の摂理というか。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そう。現実に起こっていることだから、それをもう一回映画にしなくても良いとは思うけれど、それでもどうしても作りたかったのよね。
9.11以降、インスピレーションを受けて、それを形に残したい人がたくさんいましたよね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そうね。それに関するものがたくさん作られた。
でも複雑ですよね。そういうことでインスピレーションが湧いてしまうって。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
オードリー・ヘップバーンは若い頃、『アンネの日記』のアンネ役をオファーされたことがあったの。アンネは自分と同じ年の生まれで、同じところにいた人。一方は死んで、一方はギリギリ生き残った。そんな風にして死んだ人の人生を演じることで、自分が利益を得るというのは私にはできない、とずっと断り続けてきたの。でも晩年、ユニセフに出会った時、『アンネの日記』の朗読という形でアフリカの飢餓を救うために役立てたの。
9.11にインスピレーションを得て作る人たちがたくさんいるのは分かるし、それだけのことが起こったのも事実。自分がどう感じたかを残したいという作り手の気持ちはすごく分かるけれどね…。
そうですね。
りきマルソー
りきマルソー

路子
路子
でも絶対にこういうことはなくならないと思うの。争いとかは人間の性だから、平和な時代が続けば、軍事産業も停滞する。そうすれば裏社会が動いて、テロが起こったりもする。そういうものが動き続ける限り、どんなに平和、平和と叫び続けてもなくならない。今回映画を観て、改めてそう思った。

路子
路子
時限爆弾を仕掛けたテロリストは、逃げる時間を与えているのよね? 普通ならもうちょっと早く爆破すると思うの。

その場でとか。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
出航して10分とかね。そのあたり、監督はどう考えてこのように作ったのかしら。全員が逃げられる可能性があるくらい、時間のある爆弾だものね。何か意味があるのかしら…。
どうなんですかね…。でもああいう非常事態の時の人間の欲というか、逃げる時の必死さというか、言葉難しいですけれど、すごいですよね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
我先にと掻き分け掻き分けだものね。
醜さが見え隠れしますよね。実際にそういう状況になったら、いくら死にたいと思っている自分でも同じことをするんですかね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
多分搔き分けると思う。
船といえば、あの有名な作品は観た?
『タイタニック』?
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
そう。あれも同じよね。色々なことが限られている状況。でも沈むまで楽団の人たちが演奏をしていた、というのは本当の話なんでしょう?
そう聞きますね。
りきマルソー
りきマルソー
路子
路子
人間にはそういう面もあるのよね。でも、テロとかは、そんな風に考える時間を与えないものね。本当に突然の暴力だわ。

~今回の映画~
『永遠の語らい』 2003年10月 ポルトガル・フランス・イタリア
監督:マノエル・ド・オリヴェイラ
出演:レオノール・シルヴェイラ/フィリッパ・ド・アルメイダ/ジョン・マルコヴィッチ/カトリーヌ・ドヌーヴ/ステファニア・サンドレッリ/イレーネ・パパス

-ゆかいな仲間たち, よいこの映画時間