◎74本目『今宵、212号室で』
【あらすじ】
ヒロインのマリアは夫リシャールとふたり暮らし。結婚して20年。刺激がなくなりきょうだいのようになってしまった関係で、マリアはちょこちょこと浮気をしていました。それがあるとき夫にばれてしまうのですが、「あなただってしてるでしょ?」と悪びれず、けれど夫は「一度もない」と断言。
距離を置くために、マリアはアパルトマンの向かいのホテル212号室で、ひとりきりで一夜を過ごすことに。そして不思議な一夜が始まるのです。エスプリのきいたファンタジー、そしてひとくみの夫婦の物語。
ヒロインのマリアを、キアラ・マストロヤンニが演じているので観に行きました。キアラはカトリーヌ・ドヌーヴとマルチェロ・マストロヤンニの娘。キアラがこの映画で第72回カンヌ国際映画祭ある視点部門最優秀演技賞を受賞したことでも話題になりました。
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路子
ラストシーンあたりで、りきちゃんが泣いてるって思ってた。
最近観ていた映画はあまり響くものがなく、感動とは遠い世界にいたんです。
でも久々にすごくよかったと思える映画でした。
でも久々にすごくよかったと思える映画でした。
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りきマルソー
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路子
私もすごく面白いと思ったけれど、どうして最後の場面で泣いたのかが気になる。
じゃあちょっと検証していきましょう(笑)。
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りきマルソー
キアラの夫役は、実生活でキアラと結婚していた人ですよね?
ドヌーヴのことを「彼女はパンク!」と言った人。
ドヌーヴのことを「彼女はパンク!」と言った人。
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路子
実生活で元夫だったひとと、映画で夫婦役で共演……さすがキアラたち、ってかんじね。
キアラはどんどんドヌーヴに似てきますね。もちろんマストロヤンニ感もありますけど(笑)。
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路子
顔はマストロヤンニね。
仕草やたばこの吸い方みたいな、ちょっとした動作がドヌーヴでした。
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路子
ずっとドヌーヴのこと見ていたからそう思うのよね(笑)。
(↑『カトリーヌ・ドヌーヴの言葉』執筆のこと。)
今回のキアラの役柄はとてもドヌーヴ的だった。
浮気してどこが悪いの? みたいな態度が似てる。
お母さんが幽霊みたいに現れるシーンで、ドヌーヴが出てきたら面白かったのに(笑)。
(↑『カトリーヌ・ドヌーヴの言葉』執筆のこと。)
今回のキアラの役柄はとてもドヌーヴ的だった。
浮気してどこが悪いの? みたいな態度が似てる。
お母さんが幽霊みたいに現れるシーンで、ドヌーヴが出てきたら面白かったのに(笑)。
でも、ちゃんと考えちゃうというか自問したりするのはドヌーヴ的じゃないですよね。ドヌーヴならきっと迷わず自分の信念を突き通しますよ!
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路子
うん、たしかに!
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路子
撮り方で思ったけれど、監督は本当にキアラが好きなんだなって思う。
キアラを主役にして、あんなに上手く映画を撮れる人ってなかなかいないですよね。
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路子
私もそう思う。この作品のキアラはすごくイキイキしてた。
いつも準主役的な役柄が多いものね。
たしかこの作品でキアラは何か受賞したのよね?
いつも準主役的な役柄が多いものね。
たしかこの作品でキアラは何か受賞したのよね?
カンヌである視点部門最優秀演技賞を受賞したらしいですね。
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りきマルソー
テンポがとてもいい映画でしたよね。
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路子
特に最初が面白かった。
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路子
マリア(キアラ・マストロヤンニ)は大学で教えていて、教え子をつまみ食いするでしょ。
そのことについてのセリフ、「だからこれが学生と付き合うってことよ。若者教育に精が出る」とか。
そのことについてのセリフ、「だからこれが学生と付き合うってことよ。若者教育に精が出る」とか。
長く夫婦でいるための多少の火遊びは「2+2=4くらい自然なの」とか。
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路子
痛快だった! よくぞ言ってくれた!
私の言いたいことを、すべて代弁してくれているのがこの映画です、って言いたいくらい。
私の言いたいことを、すべて代弁してくれているのがこの映画です、って言いたいくらい。
『愛のあしあと』といい、オノレ監督の作品は、毎回路子さんを代弁してくれていますね。
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路子
そうよ!
やっぱりオノレ監督はすごいのよ!
やっぱりオノレ監督はすごいのよ!
日本ではそんなに評価されていないのが残念ですよね。
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路子
テーマ的に婚外恋愛がからむと「不倫」だからダメ、というひとも多いみたいだしね。日本のみなさん、品行方正なのね、きっと。
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路子
それにしても、『愛のあしあと』もそうだったけれど、今回のキアラの役柄は、私自身とかぶったなあ。
あんな風に過去の男が、つぎつぎと登場してきたら楽しいですよね。
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路子
いや、私は彼女ほど出て来ないけどね(笑)。
落ち着くシーンもあまりなく、ずっと喋っていましたよね。
ちょっとおとぎ話的な要素もあるけれど、言っていることは真実味があるんですよね。
ちょっとおとぎ話的な要素もあるけれど、言っていることは真実味があるんですよね。
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路子
とんでもない設定よね。
そうそう。とんでもない設定なのに、とんでもない感じがしない。
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路子
ファンタジーなのに、ファンタジー感覚にならないのが不思議。
現実っぽいんですよね。
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路子
これはファンタジーでこれは現実の話とか、そういったことをいちいち考えなくてもいい作りになっているのも良かったのかも。
過去の回想シーンって、例えば映像が古めかしくなったり、モノクロやセピア色になったりする場合もあったりするじゃないですか。
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路子
そういうのがないのよね。
そうなんですよ。
回想も現実も幻想も、全て平行線で描かれているんですよね。
回想も現実も幻想も、全て平行線で描かれているんですよね。
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路子
そうそう。たまに、音でファンタジー部分っぽくしているんだな、というのはあったけれど。でも本当にその場にみんながいるみたいに描かれてる。
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路子
マリアの夫リシャール(ヴァンジャマン・ビオレ)の若い時の恋人だったピアノ教師のイレーヌ(カミーユ・コッタン)は、ダブルキャストくらいの登場の仕方だったね。
すごくよかったですよね。あの女優さん、好きでした。
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路子
そうだと思った(笑)。
そのピアノ教師の未来の姿が、キャロル・ブーケ。
すごく老けましたね。すっかりおばあちゃん。
すごく老けましたね。すっかりおばあちゃん。
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路子
ねえ!
少し大きくなってた。大きくなるとあまりよくないわねぇ。老け方に関心が……。
少し大きくなってた。大きくなるとあまりよくないわねぇ。老け方に関心が……。
昔、フランス映画祭の団長で来日した時に見たことがありますが、その時はすらっとしてました。
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路子
エマニュエル・べアール主演の『美しき運命の傷痕』で、施設に入ったお母さん役を演じていたけれど、その時はまだすらっとしてた。
夫のリシャールは、妻であるマリアへの愛情にブレがないんですよね。
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路子
一度も浮気していなかったんでしょう?
そうそう。ずっと好きだったって。
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りきマルソー
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路子
でも彼女のことを理解はしていない。好きであることと理解すること、ってイコールではないからね。
イレーヌはそんな彼について「彼は愛し合ってるつもりよ、自己満足的だけど…」、と言っていたね。
イレーヌはそんな彼について「彼は愛し合ってるつもりよ、自己満足的だけど…」、と言っていたね。
マリアに向かって「夫のくせにあなたのこと分かってなさすぎ」とも言っていましたね。
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りきマルソー
お互いを見なくなってきた、というあたりのシーン。すごく響きました。
衰えとかダメなところとか、そういうものを全て知った上で関係を築けたらいいですよね。
衰えとかダメなところとか、そういうものを全て知った上で関係を築けたらいいですよね。
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路子
それが理想ですよね、理想。
あのシーンで夫リシャールは「俺の体と君の欲望が変化した」と言っていたけれど、要するに妻の欲望はムンムンで、夫の性欲は減退してきてる。
だったら、妻は、それなら他に求めましょうという気持ちになるわよね。
夫からの欲望がなく、満たされないなら、時々のアヴァンチュールでふたりの関係性を保っていけばいい、ってマリアは思っていた。
でも夫リシャールはそういうことをしてなかったということでしょう?
あのシーンで夫リシャールは「俺の体と君の欲望が変化した」と言っていたけれど、要するに妻の欲望はムンムンで、夫の性欲は減退してきてる。
だったら、妻は、それなら他に求めましょうという気持ちになるわよね。
夫からの欲望がなく、満たされないなら、時々のアヴァンチュールでふたりの関係性を保っていけばいい、ってマリアは思っていた。
でも夫リシャールはそういうことをしてなかったということでしょう?
25年くらいでしたっけ?
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路子
そう。自分がもし結婚生活を続けていたら、ちょうど25年くらいだから、マリアの気持ちがとてもよくわかる。
登場人物がみんな愛おしく思えましたね。
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路子
私もそう思った。
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路子
ねえねえ、リシャールは、ピアノ教師のイレーヌと結婚した方が上手くいったと思う?
ふたりは10歳くらいしか違わないのよね?
リシャールが15歳頃の時、イレーヌは25歳くらい。
ふたりは10歳くらいしか違わないのよね?
リシャールが15歳頃の時、イレーヌは25歳くらい。
そんなに若くは見えなかったですね。
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路子
そうよね。40代くらいに見えた。
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路子
イレーヌとリシャールの関係は長いよね。
その間にイレーヌはリシャールを調教した訳でしょう?
その間にイレーヌはリシャールを調教した訳でしょう?
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路子
憧れのドレサージュ。
15歳から結婚する25歳までの10年間、リシャールを男として調教…イレーヌがみっちりと彼を作ってきたということでしょう。すごいなぁ…それはやってみたい。
15歳から結婚する25歳までの10年間、リシャールを男として調教…イレーヌがみっちりと彼を作ってきたということでしょう。すごいなぁ…それはやってみたい。
んふふふふっ(笑)。
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りきマルソー
それでもイレーヌを選ばなかった訳ですよね?
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路子
そうね、マリアからプロポーズされてマリアと結婚した。調教してくれた年上の女性、くらいのかんじだったのかな。10年たてば新鮮味もなくなってくるだろうし。
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路子
リシャールの青春時代の恋人であるピアノ教師のイレーヌは、「歳上の女の感じ」的に身を引いた訳だけれど、「未練があったのは長くて1年」だったのよね。1年の未練って、自分に当てはめて考えると、しんどい。
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路子
でも、一方で、その時はどうにもならない未練や絶望も、時が過ぎ去ってみれば、結局引きずったのは1年だった、って。…救いにもなるな。
そして、「愛は海からやってくる」……。
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りきマルソー
海で同性愛に目覚める。そのようすが、すごいハッピーなの、という感じでもなく、でも、本当に心から穏やかに幸せだと思っている感じ。
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路子
そう。レズビアンになるのよね。
何が起こるか分からない…何が正解で何が不正解か分からないという見方は、『愛のあしあと』でも描かれている。
何が起こるか分からない…何が正解で何が不正解か分からないという見方は、『愛のあしあと』でも描かれている。
これからの人生が楽しく思えますよね。
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路子
そう!
いいのかそれで? とも思うけど、なんでもありなんだって思えるって楽しい!
いいのかそれで? とも思うけど、なんでもありなんだって思えるって楽しい!
それでいいんですよ(笑)。
作品を通して「否定」をあまり感じないですよね。
作品を通して「否定」をあまり感じないですよね。
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路子
ないない。
ラストあたりで、「いつから俺に隠し事をしてる?」と問う夫リシャールに、妻マリアが「覚えてない」と答える、するとリシャールが「気にするな」と言うシーンがありましたよね。
たった一晩でまるっと受け入れてくれる人なんて、なかなかいないですよね。
たった一晩でまるっと受け入れてくれる人なんて、なかなかいないですよね。
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路子
やっぱりそこは文化かしらね。
そうそう。それは冒頭から思っていました(笑)。
フランスっぽい。
フランスっぽい。
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路子
自分がもともと自由恋愛オッケーという考えではないにしても、問題が起こったとき、鬼の首でも取ったように不貞を攻撃する、ってことはあまりないよね。
ショックは受けるけれど、ショックを受ける自分を納得させなくてはいけない、という文化を感じる。
ショックは受けるけれど、ショックを受ける自分を納得させなくてはいけない、という文化を感じる。
誤魔化しで終わらないところもよかったですよね。
例えば、ラストシーンで、キスしてハグして、じゃあまた夜に…みたいな終わり方もできると思いますが、でもそうやって誤魔化してハッピーエンドに強制的に持っていくみたいなことをしないのがいい。
例えば、ラストシーンで、キスしてハグして、じゃあまた夜に…みたいな終わり方もできると思いますが、でもそうやって誤魔化してハッピーエンドに強制的に持っていくみたいなことをしないのがいい。
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路子
抱きしめてぐるぐる回るみたいなのではない。
なんだっけ、抱いてぐるぐるして終わった映画(笑)。
なんだっけ、抱いてぐるぐるして終わった映画(笑)。
抱いてぐるぐる、ありましたね(笑)。
ビノシュの映画ですよね。
ビノシュの映画ですよね。
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路子
そう。ジュード・ロウと共演している作品。
『こわれゆく世界の中で』ですね。
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りきマルソー
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路子
そうそうそう!
ああいう終わり方ではない。
だから『こわれゆく世界の中で』は、腹立たしい映画だったよ(笑)。
そういう苛立ちが、この作品にはなかった。
やっぱり無理やり形を整えて終わらせよう、というのがない方がいいね。
ああいう終わり方ではない。
だから『こわれゆく世界の中で』は、腹立たしい映画だったよ(笑)。
そういう苛立ちが、この作品にはなかった。
やっぱり無理やり形を整えて終わらせよう、というのがない方がいいね。
ない方が真実味がありますよね。
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路子
うん。
そして「今夜は帰るか?」「そうね、予定もないし」みたいなごく普通の会話で終わる感じ。あれはよかった。
そして「今夜は帰るか?」「そうね、予定もないし」みたいなごく普通の会話で終わる感じ。あれはよかった。
そういった真実味や現実が少し入るだけで、映画の良さを引き立てますよね。
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路子
音楽の使い方も良かった。
『愛のあしあと』は半分くらいはミュージカルだったけれど、オノレ監督はきっと音楽が好きなんだなって思った。
でも、最後になんでアメリカのポップスみたいな音楽(バリー・マニロウ「Could it be Magic」)を使ったのかしら。
オゾン監督的な、間違えたらすごくダサくなるような冒険的選曲をしているよね。
『愛のあしあと』は半分くらいはミュージカルだったけれど、オノレ監督はきっと音楽が好きなんだなって思った。
でも、最後になんでアメリカのポップスみたいな音楽(バリー・マニロウ「Could it be Magic」)を使ったのかしら。
オゾン監督的な、間違えたらすごくダサくなるような冒険的選曲をしているよね。
そうなんですよ!
昔のオゾンっぽさを感じたんですよね。
しかも映画館のポスターの中に、オゾン監督の『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』の
ポスターがありましたよね!
昔のオゾンっぽさを感じたんですよね。
しかも映画館のポスターの中に、オゾン監督の『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』の
ポスターがありましたよね!
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路子
彼らが住んでいるところの映画館よね?
そうです。
『愛のあしあと』もそうでしたが、オノレ監督って結構オマージュ的なものを入れ込むことがありますよね。
『愛のあしあと』もそうでしたが、オノレ監督って結構オマージュ的なものを入れ込むことがありますよね。
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りきマルソー
外国語が分からない身としては、今回みたいに映画で使われる歌に字幕をつけてくれるのは本当に大賛成です。
グザヴィエ・ドラン監督の映画も字幕があるからこそ、理解が深まるというシーン、たくさんありますもんね。
グザヴィエ・ドラン監督の映画も字幕があるからこそ、理解が深まるというシーン、たくさんありますもんね。
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路子
それはそうよ。だって意味があって使われているのだもの。
感じ取るものが違ってきますよね。
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路子
分からないと、ちょっと置いてきぼりになっちゃう。
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路子
意見が分かれる映画でもありますよね。
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路子
最初からマリアのような人を許せない人っているもの。
それにしても本当に良かったなぁ。
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路子
うん。
結局、りきちゃんが泣いたのは、その良かったの一歩先に行って、何か琴線に触れたから?
結局、りきちゃんが泣いたのは、その良かったの一歩先に行って、何か琴線に触れたから?
何だろう…。
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路子
その時の想いはその時のものでとても美しい…それで良いじゃない!みたいな感じ?
それとはちょっと違うような気がします。
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路子
愛しさかな?
自分があの世界観の中に入っていた?
自分があの世界観の中に入っていた?
いたような気がします。
所々自分と重ねた部分もありました。
所々自分と重ねた部分もありました。
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路子
どこで共感したんだろう…歳もとっていないし、結婚もしてない。りきちゃん、どちらかといえば若い人、なのに。
考えてみると、楽しいことが過ぎ去ってしまった寂しさ、のようなものがあったのかなって思います。
マリアにとっては楽しいことだけではなかったけれど、彼女自身の「考える時間」としてあの幻影が出てきていたし、彼女にとってはとても大切な時間だったと思います。
その映し出されたシーンの全てに愛おしさを感じていたし、その愛おしい時間がラストシーンで一気に終わったことで、もう観られないんだ、という哀しさを感じました。何だか置いてかれてしまった感じ。
マリアにとっては楽しいことだけではなかったけれど、彼女自身の「考える時間」としてあの幻影が出てきていたし、彼女にとってはとても大切な時間だったと思います。
その映し出されたシーンの全てに愛おしさを感じていたし、その愛おしい時間がラストシーンで一気に終わったことで、もう観られないんだ、という哀しさを感じました。何だか置いてかれてしまった感じ。
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路子
一緒に流れていく時間を楽しんでしたということよね。
そうですね。
それって結構入り込んでいたということですよね?
それって結構入り込んでいたということですよね?
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路子
うん。かなり入り込んでいたんだと思う。すごいよ。
私の方が入り込んでも不思議ではない設定だったのにね?
私の方が入り込んでも不思議ではない設定だったのにね?
年齢とか結婚とか。
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路子
そうそう、やっていることとかも。
だから、りきちゃんがラストシーンで泣いているのが、なおさら不思議だったの。
私はとにかく痛快で面白くて、笑いながら観ていたから。
だから、りきちゃんがラストシーンで泣いているのが、なおさら不思議だったの。
私はとにかく痛快で面白くて、笑いながら観ていたから。
本当に楽しかった。疲れを感じなかったし、できればずっと観ていたかった。
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路子
終わるのが惜しい映画だったね。
~今回の映画~
『今宵、212号室で』 2019年フランス/ベルギー/ルクセンブルグ
監督:クリストフ・オノレ
出演:キアラ・マストロヤンニ/ヴァンサン・ラコスト/カミーユ・コッタン/バンジャマン・ビオレ/キャロル・ブーケ